「キーン! ガガガ・・・・ ガッチャーン! ドッヒューン! 我が名はドクターQ。 我が偉大なる科学力の前には、一国の軍事基地もこのザマだ。 サイキョウダー! この私が相手だ! まんまとワナにかかったな、サイキョウダー! ここがおまえの墓場となるのだ。ブッハハハハ・・・・!」 「若君!」 ワルターの手から読んでいたマンガが取り上げられる。 「何をする、爺!」 モノクロの絵とあまり変わらない、カーネルの形相があった。 「『爺』ではありません! 一体何をなさっておられるのですっ!」 「爺は知らんのか? 『無敵ロボ サイキョウダー』」 ワルターは自慢げにソファの横に積み重なっているマンガの一冊を取り上げた。昨日新刊が発売日だったので、ついつい通し読みをしていたのだ。 「今、人気大爆発のSFアクションマンガだ」 実はワルター、日本のマンガやアニメが大好きだった。皇太子であるのに、わざわざ日本大使に志願したのも、これが目当てだったりするのだが、そんなことは誰にも言っていない。 「そんなことは聞いておりませんっ! ゴルドランに敗北を続け、残りのパワーストーンの発見もままならぬ今! くうっ・・・・このようなマンガに現を抜かして・・・・」 アップになったり正座をしたりと、カーネルも忙しい。 「待て、待て、爺」 「待ちません! 本国のお父上様から連日矢のような催促。若君の吉報を一日千秋の思いで待っておられるというのにっ・・・・爺は、爺は情けのうございますぅ〜〜〜〜〜!!」 とうとうワルターの足にすがり付いて泣き出すカーネルに、ワルターも流石に悪かったと、肩に手を置いた。 「許せ、爺。だが、私とてムダにマンガを読んでいたわけではない」 「何と?」 顔をあげたカーネルから、気取られないようマンガを取り返す。 「ドクターQ! 神の頭脳と悪の野心を持つ天才科学者。彼は世界制服の野望をたくらみ、正義のロボットサイキョウダーを毎回ピンチに陥れる・・・・。 爺、ただちに本国へ連絡し、ザゾリガンを対ゴルドラン用に改造するのだ!」 「ザゾリガンを・・・・でございますか?」 「私はこのマンガからゴルドラン打倒のヒントを掴んだのだ!」 行儀悪くテーブルに足を乗せて格好をつける。カーネルはそれに気づかず、純粋に何でも知識としてしまう主人に感動した。 「若君!」 「我々の科学力とドクターQの頭脳が一つになれば! 最早恐れるものは何もない!!」 マンガの科学力が実在するのだから、ワルザック共和帝国は凄い。 「急げっ、カーネル!」 「ははっ」 ワルターの迫力に押され、カーネルは尻に火をかけたように退出した。 「待っていろよ、ゴルドラン。今度こそ貴様たちを倒し、私の僕にしてくれるわ! ふふふふふ・・・・わっははははは・・・・!」 ワルターの背後に野望の炎が燃え上がった。マンガ的に。 アドベンジャーは珍しく海底を走っていた。車内ではタクヤが、通学路のコンビニで見つけたスポーツ新聞を広げていた。 「このゴルゴダ島で、最近パワーストーンらしき宝石が発見されたんだ」 「Jスポじゃない。眉唾記事が多いよ、それ」 ダイは新聞名に、カズキは発見された地名に眉を顰める。 「おい、ゴルゴダ島って言えば、スカザンス連邦の軍事基地のある場所じゃないか? もし発見されたらたちまちミサイルの標的だぞ!」 「だから海の中を潜ってんだろ?」 「そんなことぐらいじゃ・・・・」 『前方に潜水艦発見』 「え?」 アドベンジャーはスクリーンの表示を切り替えた。岩陰に建造物が見える。カズキは予想通りの展開に、すぐに退去を命じた。 「やばい、逃げるんだ!」 『いや、あの潜水艦は・・・・』 タクヤたちの後ろでモニターを見ていたドランは、アドベンジャーに映像をアップにするように言った。 「あっ・・・・!」 拡大された潜水艦は、どれも無残に破壊されていた。 破壊されていたのは潜水艦だけではなかった。ゴルゴダ島は、島全体が一つの軍事基地の小さな島だ。それが、全て破壊されていた。残り火がちろちろと喘ぐように燃えている。 「一体何があったっていうんだ?」 「もしかして、戦争?」 だが、アドベンジャーたちが受信するニュースや各国の通信網では、何処もそんなことをしている様子はない。 「? 待てよ・・・・こんなのどっかで見たような・・・・」 タクヤはこの破壊された姿に、何処か見覚えがあった。何処か不自然に見えるのは、壊された戦車や建物を、わざと移動させた形跡があるからだ。収まらない煙でよくわからないが、調べてみようと足を踏み出した途端。 「うわっ!」 「タクヤ!」 穴に落ちた。 「あー、いてててて・・・・」 「大丈夫かい、タクヤ君」 「ああ・・・・」 穴は結構深い。タクヤが手を伸ばしても穴の縁に手が届かない。カズキとダイは屈んでタクヤを引っ張り上げようとした。 「よいしょっと」 「あ!」 冷たい潮風が煙を払う。そこに見えるようになった穴の全体図に、カズキが硬直する。 「どうした、カズキ?」 「足跡だ・・・・」 「足跡ーーー?」 「そうだ。この穴は巨大な足跡だ!」 「ええ!?」 「あっ、本当だ!」 カズキに続いてダイも立ち上がった。手を放されたタクヤは再び穴に落っこちる。 「うわっ! いっててて・・・・バッカヤロ!」 タクヤの罵倒などどうでもよい。煙の晴れた後には、確かに巨大な足跡が、島を横断する形で残っていたのだから。 「こんなでっかい足跡があるもんか! もしこんなヤツがいたら・・・・」 タクヤは落ちた穴を見渡す。これだけで小さな体育館ができそうだ。 「ざっと身長は二百メートル・・・」 「ひえー!」 「う、嘘だろーーーー!」 「そうだよね、二百メートルの巨人だなんて・・・・」 「フフフフ・・・・愚かなお子達よ・・・・」 何処からともなく、ワルターの声が響いてきた。いつもよりずっと低く、芝居がかった声だった。 「その声は悪太!」 「パワーストーンにつられて、まんまと罠にかかったな」 「罠だって!?」 「じゃあ、パワーストーンは!」 「おまえたちをおびき寄せるためのニセ情報だ」 「ええ!?」 普通、軍事基地で何かが発見されても外部に情報を漏らすようなことはしないだろう。 「見ろ! 我が偉大なる科学力の前では、一国の軍事基地もこのザマだ」 「あ〜ん? どっかで聞いたセリフ〜・・・・」 ワルターは『無敵ロボ サイキョウダー 四巻』の台詞を読み上げながら、ザゾリガンを浮上させた。 「フフフフ・・・・ここがおまえたちの墓場となるのだ!」 足元が揺れ、地面から赤いハサミが顔を出す。 「うわわわ・・・・!」 地震ではない。タクヤたちの立っている大地が揺れているのだ。ヒビの入った地面に、カズキとダイも穴に放り出される。穴の地面の土塊がバラバラと崩れ、下から金属板が覗いた。地中にザゾリガンが潜んでいたのだ。カスタムギアの射出口近くに取り残されて浮上したタクヤたちは寄り添い、助けを呼んだ。 「ドラーン!」 『主!』 アドベンジャーから飛び出したドランが二十メートル近くジャンプし、ザゾリガンの背中に飛び乗る。ガルウイングの扉が開いてタクヤたちを招いた。 『急いで乗るのだ!』 主を乗せると、尚も浮上を続けるザゾリガンから飛び降りる。 「うわー!」 ビルの十階から飛び降りる豪快なダイビングに、舌を噛みそうになる。ザゾリガンの砲塔がドランに向けられた時、銀色の影がよぎった。 『バードチェイサー!』 『モールドアタッカー!』 『フェイランチャー!』 シルバーナイツが主を守るドランに代わって、それぞれの盾からミサイルを発射したのだ。 『シルバーナイツ!』 『だめだ! ビクともしない!』 アドベンジャーも変形して駆けつける。 『ドラン、合体せねば勝ち目はない!』 『うん、シルバーナイツ、合体だ!』 『ラジャー!』 ジェットシルバーの掛け声で、シルバーナイツがシルバリオンに合体する。ドランも主を離れた場所に下ろし、ゴルゴンを呼んだ。 『いくぞ、一気に勝負だ!』 『おう!』 「フフフフ・・・・勝負はこれからだ! トランスフォーム!」 一人きりのブリッジでワルターが叫ぶと、ザゾリガンの青い目が光った。上体を起こし、上を向いていた尾が二つに分かれて、付け根部分とジョイントして足になる。ハサミを真っ直ぐ伸ばして腕に、主砲は肩に置かれ、サソリの頭が半回転し、下から人の顔が出てきた。 「ああっ!?」 『おおっ・・・・』 『こ、これはっ・・・・!』 目の前に降り立ったのは赤い悪魔だった。 「あの足跡の正体はこいつだったんだ・・・・!」 「何てでっかいロボットなんだ!」 二十メートルクラスのゴルドランたちの、優に十倍はあろうかという巨体。 「ハハハハハ・・・・見たか! これが地上最強のロボットだ!! いくぞ!」 ワルターはザゾリガンのインジャクションレバーを倒した。一歩踏み出すごとに、地面が陥没する。腹の底まで響くその音に畏怖すら感じたが、ゴルドランはスーパー竜牙剣を抜いた。 『とあっ!』 ゴルドランに続いて、シルバリオン、アドベンジャーもザゾリガンに飛び掛る。だが、大きさがまるで違う。幾ら斬りつけても装甲にはヒビ一つ入らず、片手で払うだけで三人まとめて地面に叩きつけられた。 『うわあ!』 「負けるなゴルドラン!」 『くそうっ!』 主の前で怖気づくなどとんでもない。勇者たちは再びザゾリガンに立ち向かったが、どんな攻撃も、軽くザゾリガンが体を揺らすだけで弾かれてしまう。 『うわっ!』 「ゴルドラン!」 「だめだ、パワーが違いすぎる!」 「みんな、頑張って!」 「フフフ・・・・トドメだ・・・・」 ザゾリガンの両肩の主砲が、倒れて動けない勇者たちに牙を立てた。 「!!」 『!!』 それはゴルドランたちを直撃するのみならず、瓦礫を伴った爆風がタクヤたちまで巻き込んだ。 「うわーーーーっ!!!」 「フハハハハ・・・・」 ワルターの嘲笑が響くなか、体のあちこちをぶつけたカズキが、なんとか頭だけでも起こす。 「うっ・・・あ・・・・」 タクヤとダイを探す。ダイはすぐ隣りにいた。痛みに体を震わせ、なんとか起き上がろうとしている。タクヤはいなかった。 「タクヤ・・・・?」 カズキの顔から血の気が引いた。 「おい、タクヤ! 何処だ!? タクヤ・・・・痛っつ・・・・!」 カズキの悲鳴にダイも痛みを堪えて体を起こし、辺りを見回す。 「ん・・・・タクヤ君・・・・? !! あそこ!」 「タクヤ!」 小柄なタクヤは一番遠くまで吹き飛ばされていた。うつ伏せになったまま、声をかけてもピクリとも動かない。 「タクヤ君!」 『う・・・・主!』 『う、うう・・・・』 カズキとダイの悲鳴に、ゴルドランたちもボロボロになった体を必死に奮い立たせる。傷つき、倒れた主たちの姿があった。 『あ、主・・・・!』 アドベンジャーの瞳に、倒れたタクヤの姿が映る。無機質なコンクリートに、赤い染みがじわじわと広がっていた。 『っ・・・・! よくも主を・・・・!』 頭の小さな煙突からシューと煙が噴き出す。アドベンジャーの怒りが頂点に達し、今まで封印していた武装が解除される。両足に四連装フットランチャー、右手にスマートガンを持ち、左手にガトリングショット、右腕にメガライフルが装着され、右肩にアイアンキャノン、左肩の四連装ショルダーランチャーの超重武装だ。 『アドベンジャー!』 『アドベンジャーに、あんな武装があったなんて・・・・』 武器を持たず、後方支援だけが彼の役目と思っていたゴルドランにシルバリオンも驚きを隠せない。 『くらえっ!!』 アドベンジャーの隠されていた武装が一斉に火を噴いた。 「何っ・・・・!」 この集中砲火には流石のザゾリガンもたまらない。各所に穴が開き、勢いに押されて後退し、倒れた。 「うわ、わ、あ〜〜〜〜〜!?」 巨体なだけに、一度倒れると立ち上がるのは困難だ。ひっくり返った亀のようにジタバタ暴れるザゾリガンを尻目に、ゴルドランは仲間に撤退の指示を出した。 『主をつれて、ひとまず退却だ!』 『ラジャー!』 『アドベンジャー!』 『了解!』 アドベンジャーもすぐに攻撃を切り上げ、SLに変形する。傷だらけのカズキとダイが、そっとタクヤを運び込んだ。 「おのれ〜〜〜!」 ワルターの声を背後に、アドベンジャーは急いで日本に戻る。ダイは救急箱も置いていない車内に歯噛みした。出血の所為か、青褪めたタクヤをできるだけ動かさないように、タオルを枕代わりにしてソファに寝かせる。 「しっかりして、タクヤ君」 「タクヤ・・・・」 いくら呼びかけても反応すらしないタクヤに、だんだんと不安が募っていった。 「タクヤ・・・・」 『主・・・・』 タクヤが入院して三日経った。出血が派手に見えただけで頭の傷は予想よりも深くなかったが、既に二日も意識がない。カズキとダイもあちこちに打撲や擦り傷をつくり、しばらく通院するハメになった。 三日目の午前中、カズキとダイはタクヤから通信を貰った。意識が戻ったのだ。喜んだダイはドランたちへ報告するとタンカーへ行き、カズキは先に一人で病院へ向かった。扉を開けると、そこには頭に包帯を巻いたタクヤが、ベッドの上であまり美味しくない病院食をがっついていた。 「んぐんぐ・・・・よっ!」 「・・・・『よっ!』じゃねーよ! ったく・・・・」 カズキは苦笑して、体の傷を庇いながらベッドの側の椅子に腰掛けた。テーブルにはミチル先生やクラスメイトからの見舞い品(カズキとダイはカンパを免れた)が置かれている。 「それにしても怪我人のくせによく食うな、おまえ」 「ケガと胃袋は別なの。それより、それ見てみろよ。四巻の五十三ページ辺り」 タクヤは見舞い品の隅に置いてある、『無敵ロボ サイキョウダー』数冊をフォークで指した。退屈だからと母親に持ってきてもらったのだ。 「おまえ、意識戻ったばっかりでよくマンガ読む気になったな・・・・」 「いいから!」 「あん?」 仕方なしにページをめくる。ついでに少し読んでしまったが、それは仕方がない。 「悪役のドクターQは、自分の要塞を超巨大ロボットに改造して、・・・・あぐあぐ・・・・性能テストのため、軍事基地を襲撃するんだ」 「ああっ!」 問題のシーンにカズキは思わず声をあげた。結構前の話なので、最近読んでいなくて忘れていた。 「おまけに、ニセの情報を流してサイキョウダーをおびき出してる」 「ホントだ! 台詞まで同じだ!」 「多分、悪太のヤツはそのマンガを参考にして作戦を立てたに違いない。んぐんぐ・・・・」 「どうりで今回の悪太は一味違うと思ったぜ!」 「どことなく貫禄があったもんな!」 二人は顔を見合わせて笑った。 「はっくしょん!」 「ヤツがこのマンガを参考にしてるなら、打つ手があるんじゃないか?」 カズキは『サイキョウダー』の続きを読み、情報を仕入れる。 「すぐドランたちに知らせよう!」 「大変だよ!」 ダイが扉を乱暴に開けて飛び込んできた。 「ドランが・・・・ドランたちが!」 「えっ!?」 病院から脱走したタクヤたちは、真っ直ぐタンカーに向かった。だだっ広い空間は冷え冷えとしていて、彼らの包容力のある気配は微塵もなかった。 「こんな・・・・バカな!」 カズキはポケットからゴルドライトを取り出して呼び出しをかける。 「ドラン! ドラン! ・・・・ダメだ、通信の応答もない」 「何故だ!? オイラたちに黙って一体何処へ!?」 「多分、タクヤ君の怪我が原因だよ」 「え?」 「タクヤ君だけじゃない。冒険を続ける限り、僕やカズキ君だって、いつ大怪我をするか、命を失うかわからないんだ!」 「・・・・・」 体の痛みが、尚更タクヤとカズキを苛む。 「だから、だからドランたちは・・・・!」 『主たち、許して欲しい・・・・』 『これ以上、主たちを危険な目に合わせたくはないのだ・・・・』 空き缶が夜の路地裏を転がった。 「バカヤロー! 自分たちだけで、どうやってパワーストーンを探すんだ!」 タクヤが思いっきり缶を蹴る。 「後で泣きついてきたって知らねーからなっ!」 カズキは歩いているうちに缶の落ちている場所まで辿り着くと、また蹴った。跳ね返ったゴミ箱の上で、野良猫がフーッと毛を逆立てる。 「今頃、どうしてるだろう・・・・」 カンカン・・・・ 蹴ったはずの缶が落ちてくる。俯いていた顔をあげた。 「あ!」 「・・・・悪太!」 何時の間にか、銃を持って辺りに潜んでいたワルターの親衛隊員に囲まれる。 「ふん・・・・」 そのままタクヤたちはザゾリガンに連行され、夜を明かした。起きてから案内されたのはザゾリガンの中央制御室だ。何人もの親衛隊員が、マンガを見ながら何やら打ち込んでいた。 「この『無敵ロボ サイキョウダー』全巻より、ドクターQの作戦及び行動パターンを残らずザゾリガンのコンピューターに入力しているのだ。 わかるか? これで私とドクターQは一心同体となる」 「一心同体?」 嫌な一心同体だ。 「バーカ! マンガの悪役は昔から、最後には負けるって決まってんだよ!」 「ふん。そんなものは作家の都合にすぎん」 「俺たちを一体どうするつもりだ!」 「おまえたちは囮だ」 「囮?」 ワルターは山と積まれた『サイキョウダー』のコミックスを眺めた。本屋は大儲けしただろう。 「『無敵ロボ サイキョウダー 第二十八巻』。ドクターQは子供を人質にし・・・・」 「アドベンジャー接近、アドベンジャー接近!」 「!!」 ゴルドシーバーの電波を追ってきたのだ。 「なっはははは・・・・噂をすれば何とやら! お子達を部屋に閉じ込めておけ!」 「はっ!」 銃で突かれ、暗い独房のような場所へ連れて行かれる。 「コンピューターへの入力、全て完了しました」 「よろしい。 ザゾリガン、トランスフォーム!」 アドベンジャーの攻撃で受けた破損も修理が終わり、ザゾリガンは再び巨大なロボットとなってゴルゴダ島に立った。その前に、シルバリオン、アドベンジャー、ゴルドランが微力ながらも立ちはだかる。 『おまえたちの目的は、私たちのパワーストーンのはず!』 『主たちは関係ない!』 『主たちを返すのだ!』 閉じ込められたタクヤたちも、必死に近くにいるはずのゴルドランたちに呼びかけていた。 「ゴルドラン! ゴルドラン!」 「アドベンジャー、シルバリオン!」 「ダメだ、妨害電波だ」 「ふっ、飛んで火にいる夏の虫め! 今日でゴルドランは最終回だ!」 言っていいのか、そんなこと。 ワルターはドクターQと同じ思考パターンを手に入れるため、データの入力されたザゾリガンのメインコンピューターから直に情報を頭脳に仕入れるヘルメットのようなものを被った。これで脳波誘導でザゾリガンをコントロールできる。 アドベンジャーがフルアーマーで再びザゾリガンに立ち向かう。ゴルドランとシルバリオンはその隙を作ろうと飛び掛る。 「同じ手を食うか!」 対アドベンジャー用に用意しておいた盾で攻撃を防ぐ。 『何っ!?』 そして肩の主砲を発射した。 「くらえっ!」 『うわ!』 『アドベンジャー!』 見回りにきた親衛隊員は、格子窓の向こうに二人しかいないことに気がついた。 「ん? もう一人は!?」 「へへへ・・・・」 タクヤが天井の隅に、包帯を渡して足場を作って待機していた。扉を開けたまま入ってきた親衛隊員に飛び掛る。 「よっとお!」 「おわ!」 「こいつめ、こいつめ!」 カズキとダイも一緒になって大人を一人縛り上げた。そのまま廊下に飛び出す。 「どうする?」 「オイラに考えがあるんだ」 三人は他の親衛隊員たちに気づかれないように、慎重に中央制御室へ向かった。 ザゾリガンの全砲門で立ち上がる隙もないほど攻撃を加え、足の一蹴りでなぎ倒す。 「何が正義だ、何が勇者だ! 力のある者だけがこの世を支配するのだぁ! ハハハハ・・・・!」 都合よく誰もいない制御室で、カズキがシートに着いてコンピューターにハッキングをかけた。 「カズキ!」 「任せておけ!」 一歩、また一歩と、ザゾリガンが地響きと共に勇者たちに肉薄する。 『ううっ・・・・』 「お見事ですぞ、若君! 爺は、爺は嬉しゅうございます。うっうっ・・・・。さあ、彼奴らにトドメを! そして一刻も早くパワーストーンを手に入れるのです!」 「パワーストーン? 最早そんなものはどうでもいい! 既にこの地球は私のものも同然なのだあ! ヒヒヒ・・・・アーハハハ・・・・・地獄へ落ちろ、サイキョウダー!」 ザゾリガンがゴルドランを踏み潰そうと足を振り上げた。 『ああっ!』 止まった。 『!?』 動きが止まったのだ。足を振り上げたまま、ザゾリガンが動かない。 「若君?」 「あ、」 入ってきた情報の異質さに、ワルターの表情が強張る。 ダイは制御室にも微かに響いていた振動を感じなくなって、辺りを見回した。 「動きが止まったみたいだ」 「いいぞ! その調子でサイキョウダーのデータをじゃんじゃん入力するんだ!」 「ようっし!」 ワルターに流れる情報の色が変わる。 「うあ・・・で、できない・・・・いや、やってはいけないのだ・・・・」 「若君、しっかりしてください! どうなさいました!?」 返事をしないワルターに、カーネルはすぐに振り返って手を振る。 「カスタムギア隊出動! 若君に代わってゴルドランにトドメを刺せい!」 『いったいどうなっているんだ?』 固まったまま動かないザゾリガンに、アドベンジャーが構えたまま首を傾げる。だがゴルドランには確信があった。 『主だ! 主たちに違いない!』 今度はザゾリガンの袖のような場所からカスタムギアが降りてくる。幾ら傷ついていたとて、カスタムギアに遅れを取る勇者たちではない。反撃しようとした時だった。 ザゾリガンがカスタムギアを踏み潰した。 『何!?』 「この世に悪が栄えた試しはない! ドクターQ! 正義の鉄拳を受けてみよっ!」 ゴルドランたちの目の前で、ザゾリガンがカスタムギアに砲撃し、踏み潰していった。 「無敵ロボ サイキョウダー!」 「若君がご乱心じゃ・・・・!」 カーネルが卒倒する。 「ハハハハハ・・・・このっこのっ、悪党めっ!」 敵のあまりの変異にあっけに取られていたが、我に返ったアドベンジャーが提案する。 『今だ、ゴルドラン! 私がヤツに穴を開ける。中に飛び込み、主たちを救出するのだ!』 『わかった。しかし、あの堅い装甲にどうやって穴を?』 『私には、最後の武器がある』 アドベンジャーは力強く頷いた。 「なんでもいいから早く来てくれ!」 「ゴルドラン!」 カズキだけでは間に合わないので、タクヤとダイも入力する。ただし、こちらはコンピューターに関しては素人だ。キーボードの意味もわからず、とにかくボタンを押しまくった。 「う、ぐ・・・ぐわーーー! あ、はっ、はあっ・・・・うわーーーー!!」 意味のない数値の羅列がワルターの脳をめちゃくちゃにかき回す。激しい頭痛に、ワルターはのた打ち回った。 『いくぞ、アドベンジャー!』 ゴルドランからドランが分離し、車に変形する。 『了解!』 アドベンジャーはSLの正面に当たる、胸の蓋を左手であけた。 『ギャラクティカバスター!!』 放たれた高出力のエネルギー弾は、ザゾリガンのどてっぱらに穴を開けた。ドランが飛び込む。中はアドベンジャーの攻撃と、制御系の逆流した情報で火の海になっていた。身動きがとれず、留まったままのゴルドシーバーの場所に向かって、壁をぶち抜いて走り寄る。 「ドラン!」 正気に返ったカーネルは、気を失ったワルターに駆け寄った。 「若君!」 ザゾリガンの火災は、鎮火不可能なレベルに達している。伝送系から電気系へ、機械系へと連鎖的に爆発がおこり、ついにエンジンにまで飛び火する。黒煙をあげて爆発四散したザゾリガンから、黄金の車が飛び出した。 『主!』 『ドラン!』 爆風を避けていたアドベンジャーとシルバリオンが声に喜色を混ぜた。 そしていくつかの脱出ポッドも外に飛び出す。振動でワルターは目を覚ました。 「あ・・・・」 「お気づきになれましたか、ワルター様」 「爺、私は一体・・・・」 「これからはマンガも程ほどにしてくださいませ」 「ああ・・・・」 ワルターはきまり悪そうに顔を赤くした。 長い一日だった。無機質なゴルゴダ島を、茜色の夕陽が染める。合体を解いたドランたちは、主の前で立たされて。 「今回はオイラたちの大活躍だったろ?」 『うん。主たちがいなければ、今頃私たちは・・・・』 「俺たちのありがたさがよーくわかったろ?」 『よーくわかりました』 シルバーナイツもしきりに頷く。 「じゃあ、もう何処へも行ったりしないよね?」 『主・・・・私たちは・・・・』 「ストーップ!」 何かいいかけたアドベンジャーをタクヤが遮る。 「冒険に危険はつきものさ!」 「これからも一緒に戦おうぜ!」 「ね、いいでしょ? アドベンジャー」 主の言葉が胸に染み入る。アドベンジャーは胸に手を当て、深く深く頭を下げた。 『・・・・ありがとう、主』 「いやっほうーーーーーっ!!!」 自分たちが側にいると言っただけで、こんなに喜んでくれる主がいる。身を寄せ合って笑う主たちに、ドランたちの胸の奥が熱くなった。 |
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