“彼”は、兵器開発局から彼宛ての要請書の量が多いことを不信に思った。ワルザック共和帝国は表立って兵器産業を行ってはいない。人目につく警察や軍の装備などは輸入で賄っているが、実際は違う。古くから伝わる秘伝のオーバーテクノロジー、物理理論を用いた“ギア”に代表される兵器の数々は、質、量、共に地球の他の国で使用されている兵器群をはるかに見下ろす位置にいる。多くは実戦に使用されず終わっているというのに、この改良要求、試作品の要求は、まるで戦時中のように多い。 「この兵器改良要請は何事です? まだ試作段階のミサイルギアまで持ち出している」 書類を持ってきた兵士は直立不動の姿勢で答えた。 「はい。ワルター様のご要請です」 「・・・・戦争とは無縁の日本大使館に赴任しているというのに何故このような大量の・・・・それに他国に対して使用したこともないカスタムギアのこの破壊された数は、異常だ。用途は一体なんなのだ?」 「明記はされておりませんでした。ただ、陛下の勅命も合わせてありましたので、そのまま手配いたしました」 「陛下の?」 彼は一瞬険しく眉をひそめた。皇帝が皇太子に勅命を出す。しかもここまで秘密裏に大量の兵器を必要とするとは一体どれほど重要な事柄か。思わず右手親指の爪を噛む。彼が不安を感じた時にする、幼いころからの癖だった。 「使用目的とそれに関する資料を二十四時間内に収集しなさい。四十八時間後に陛下にアポイントメントを」 「は」 職務に忠実で疲れを知らない彼の部下は、五時間で資料を作成した。 「パワーストーンに封じ込められた勇者、ですか・・・・」 彼は資料に添付された写真を見た。勇者の主たる三人の少年が屈託無く笑っている。どこかの家柄に生まれたわけでも、飛び抜けた才能があ るわけでもない。写真だけ裏返しにして別にした。バカみたいに笑っている子供は嫌いだ。 「そして、これがカスタムギアや新型兵器の消費理由の、レジェンドラの勇者たち」 肝心の戦闘データは、消費した兵器の数からすれば極端に少なかった。例え全滅が予想される戦闘でも、データは後続の為に必要なのに、である。 「それすらも知らずに・・・・いや、知っているが忘れてしまうようなバカでは、どんな兵器を使用しようが、戦闘に勝つことなどできませんよ」 軽く舌打ちすると、すぐにデータを収集させる為の作戦を立てた。 「そう。データ収集だけでなく、邪魔者も消せる一石二鳥のね。現在使用可能な工作員は・・・10号ですか」 彼は工作員10号を呼びつけると、必要な機材を与え、すぐに日本に向かうよう指示した。 工作員10号は、先日ワルターの要請で開発されたブレイン・ダイレクト・アクセスシステム(BDAS)を改良したトレーラーと共に、石環町へとやってきた。そこにはレジェンドラの勇者と、その主たる少年たちがいるからだ。彼らの家の付近から石環海岸までの道を見張っていると、呑気に笑いながら歩いている三人の子供の姿が見えた。トレーラーをすぐに移動させる。 「原島拓矢様に、時村和樹様、そして須賀沼大様ですね?」 背広を着て眼鏡をかけた工作員10号は、立ち止まったお子達の前に下りた。 「バーチャルゲーム?」 「そうです。我が社が開発している最新鋭のリアル体感ゲーム。それが、バーチャルゲームなのです」 「その製作に、僕たちが必要なんですか?」 「はい、我が社はバーチャルゲームの発売ソフト第一弾として、貴方たちと勇者たちの活躍を題材に選んだのです」 「ええ?」 「どうしてそれを?」 カズキが目を細めて眼鏡の男を睨んだ。勇者たちのことは誰も知り得ないはずだ。彼らのことは存在しなかったとして、あるいは別のものに注意を反らされ、忘れてしまうのだから。 「大丈夫、秘密は守ります。我々が欲しいのは冒険のデータだけです」 「でもなあ・・・・」 タクヤはじっと工作員10号を見た。何かが警鐘を鳴らしている。 「もちろん、それ相応のお礼はさせていただきます」 「お礼〜〜〜! 喜んで引き受けさせていただきま〜す!」 金銭には弱かった。 工作員10号はお子達をBDAS入力装置の設置されているデータ採取室に案内すると、逃げ出せないように手足に枷をはめた。 「何これ?」 「電気椅子か?」 「いや、これはおそらく俺たちの記憶をコピーするマシンだ」 勇者を呼ばれないよう、急いで説明を付け加える。 「流石ですねえ。そのとおりです。バーチャルゲーム専用のデータ記録システムです。危険は全くありません」 「なるほどねえ・・・・」 画面の中のタクヤは拘束された全身を見渡した。 続いて工作員10号はトレーラーをワルザック共和帝国日本大使館の前に到着させた。門の前には事前に連絡を入れておいた為、皇太子ワルター・ワルザックと執事のカーネル・サングロスが待っていた。白衣を着てトレーラーから降り立つ。 「本国より参りました、特別医療班です」 「うむ、よろしく頼むぞ」 ワルターは気さくに声をかけ、トレーラーに乗り込んだ。彼の親衛隊員に指示を出してBDAS用の電源を確保する。 「電源はこれでよろしいですか?」 「ああ、結構」 「しっかし、凄いコードだな」 直径30cmはあろうかというコードに親衛隊員が目を丸くしている。他の国ではこんな規格は存在しないだろう。 「ちょっとばっかり、電気を喰うんでね」 ガチャっとワルターとカーネルの手足にも、電気椅子のような枷がはまる。 「なッ?! これはどういうことなのだ?!」 「何でも、電気の力で悪い部分を治療する機械だそうで」 手間が省けたことに、事前に連絡を受けていたカーネルが説明してくれた。 「そうか。昨今の医療技術も進歩したものよ」 微妙に鳥肌が立つのを無理やり抑えるように、ワルターは呟いた。 「ゲームの悪役ってやっぱ悪太なんだろーな」 「だね」 「いいザマだな」 出来上がるゲームの予想を早くも立て、魔王然としたポリゴンのワルターを思い浮かべてタクヤたちは笑った。 「はっくしょん!」 「お風邪でございますか」 「やも知れぬ」 手が使えないため、ずずっと行儀悪く洟をすする。 「やはり健康管理は大切なのであるな。今日はお子達のことは忘れて、健康管理を受けよう」 制御室で工作員10号が席につく。壁一枚を隔てて、タクヤたちとワルターたちは椅子に座らせられていた。 「皆さん、準備はよろしいでしょうか。では、システムを作動させます」 α波が発せられ、誰もが疑問に落ちる間もなく容易く眠りに入った。 「被験者、催眠状態を確認。衛星回線オープン。被験者より採取されたデータを転送」 工作員10号は、彼に回線をつないだ。 遠く離れた暗い場所ではディスプレイにデータが映った。計画は順調だ。彼はサイドテーブルからアイスクリームを取り上げ、掲げる。 「着ましたね。それでは、見せてもらいましょうか」 送られてきたのはそれぞれの勇者たちとの出会いだった。全てワルターはその側にいた為、どの勇者との戦闘も見られた。使用したギアと比較すれば、戦闘データを取るのは容易だ。 ディスプレイの表示が消え、再び部屋は暗くなる。 「次のデータは二百秒後に転送します。 殿下、データ採取後の被験者たちはどう致しましょうか?」 『殿下』と呼ばれた彼は、スプーンを動かす手を休めずに告げた。 「全員、事故に見せかけて殺しなさい」 「ワルター様もでございますか」 「もちろんです」 唇の両端がつり上がり、彼はアイスクリームの味の良さに笑った。 同じ頃、自作のアイスクリームの入ったボックスを抱えたシャランラが大使館にやってきた。もちろん、ワルターに食べてもらうためだ。足取りも軽く、彼女は大使館の前のトレーラーに注意を払わずに大使館に入っていった。 次の映像が届く。お子達は勇者たちをこき使い、勇者たちは主の命令のままに、あるいは予想もしない形で彼らを守っていた。洞窟に潜り、手作りの船で遭難し、知らない土地で知らない人間に出会い、絆を深めた。 ワルターは数々の敗北を見せているにもかかわらず、ヘラヘラ笑っていた。皇帝の勅命を優先させず、映画を撮り、猫にされ、パワーストーンを先に奪われている。 「ふん、無様な」 猛回転していた光ディスクが止まる。彼らの主観的な記録はそこで終わった。 「レジェンドラの勇者の力、全て見せていただきました」 彼の足元では、狼にも似た大型犬が低く唸る。 「では、全員抹殺しなさい」 「了解」 工作員10号は、電圧のレベルをあげていく。比例して上がる電流が、被験者たちの体を焼き尽くさんばかりの電磁波を発し始めたとき、唐突にBDASが落ちた。 「こ、これは・・・・!」 モニターの向こうでは、催眠状態から開放されたタクヤやワルターたちが大きくのびをしていた。高圧電源と接続しているコードが切れたのだ。トレーラーの外でワルターのいないことにしょんぼりとして大使館から出てきたシャランラが躓いたのが原因なのだが、工作員10号がそれを知る術はなかった。 「あ、あ、ああ・・・・しまったっ・・・・!」 「工作員10号。計画は中止にします」 「はっ・・・・」 すぐに彼から指令が入る。 「全員を送り出しなさい」 「ははっ」 トレーラーの別々の出口から外に出された五人は、それぞれ満足そうに帰路についた。 彼は帰還した工作員10号を隔離した。狭く、無機質な部屋だ。 「よくやりました、工作員10号。 ただし、その後がいけなかったですね。あの失敗は許されません。君を処分します」 彼が手元のボタンを押す。天井から床にかけて電撃が降り下ろされ、工作員10号の首が床に落ちた。仮面が剥がれ、鋼鉄の骨格や配線が露になる。彼はアンドロイドだった。 「時間です。行きましょうレイザー」 アポイントのとってある四十八時間後がもうすぐだ。彼は足元の大型犬の首を優しく叩いた。 寒々とした謁見の間で、遥かな高みに座するトレジャー皇帝の前に跪く。下につく者には視界を得る為にわずかな明かりしか許されないが、その灯りの下にほの白く浮かぶ彼の姿は、長い水色の髪とアメジストの瞳を持った、タクヤたちと同じ年頃の外見を持った少年だった。 「お久しぶりです皇帝陛下。ただいま帰りました。 兄上のパワーストーン探索、遅々として進まぬと聞き、少し調べさせていただきました」 先ほど採取したデータのコピーが入ったディスクを差し出す。 「このディスクには勇者たちと兄上の戦いぶりが記録されています。是非、陛下のご判断の材料にと。 私は勇者たちの分析を行います。勇者たちを倒せば、彼らはパワーストーンに戻ると聞いています。効率よく彼らを手に入れる方法を考えるべきではないでしょうか?」 一息大きく息を吸い、彼は顔を上げた。 「願わくば、パワーストーン探索の全てを、このシリアス・ワルザックにお任せください。皇帝陛下」 そしてこれが勅命とはいえ公式のものではないということで言葉を改める。だからこそ、彼はこの現実離れした事態に首を突っ込んだのだ。 「いえ、父上」 猫が再び、にゃおんと鳴いた。 『主ーーー! 主ーーー! 主ーーーー!!』 『主よーーーー!!』 『主〜』 『主ーーーッ!』 砂嵐の中、いくら声をあげてもタクヤたちの声はしない。乱舞する砂は若干彼らのセンサーを狂わせ、通信回路は時折掠れて聞き取れない声を聞かせるばかりだ。 「ヘンな奴等に捕まっちまったんだ。ドラン、直ぐ来てくれ!」 いつもならまだタクヤたちが彼らの元にくる時間ではないのに、突然飛び込んできたSOS信号を辿ってここまできた。だが、主の姿どころか怪しい影すら見当たらない。嵐に隠れて砂の一部が盛り上がる。特殊なエネルギー感知センサーが、勇者たちの内側から発せられるエネルギー波をシリアスのもとへ勇者たちの姿を送った。 「では、あなた方の実際の性能を見せていただきましょう」 『何かくるぞっ!』 空影が砂中を進むミサイルの存在をキャッチした。固まっていたところを飛び退き、直撃を避ける。すぐに第二波を予想して散開した。 「次はもう少しスピードを上げたミサイルを・・・・」 彼の微笑は部下のノック音で破られた。 「何事です」 「は。ワルター様が皇帝陛下より召還され、お言葉を賜ったそうです。兵器開発局へゴルドランの合体機構を解析したギアを製作するよう依頼がまいりました」 「ほう」 シリアスは勇者たちの性能テスト用のゲリラシステムボタンから手を離した。 「そちらの方がより詳しいデータを得られるというもの。そう、戦闘データは後回しにできる程のもののね。よろしい。私が設計しましょう。ただし、そのことは伏せておきなさい」 それきり、砂嵐は収まった。勇者たちが腑に落ちない心境でアジトにしているタンカーに戻ると、退屈そうに待っていた主たちがいた。 『主!』 『やはり無事でしたか』 「はあ?」 「何言ってんの、おまえら?」 ロボット形態のまま深刻な表情をして、自分たちを取り囲んだ勇者たちを見上げる。片膝をついてドリルシルバーが簡潔に説明する。 『先ほど、主たちのSOS通信をキャッチしたのであります!』 「SOS通信?」 『そうです。そして呼び出された場所に行ったら・・・・』 『ドッカーンってわけさ』 アドベンジャーの上に座ったスターシルバーが両手を広げてみせる。 「ドッカーン・・・って、まさか・・・・?!」 『地底魚雷でござった』 「ちょ、ちょおっと待てよ」 タクヤは驚いて手を左右に振った。 「オイラたち呼んでないぜ」 「学校行ってたもん」 今日は夏休みのうち数日ある登校日だった。主たちはそろって顔を見合わせた。 『おそらく、何者かが主たちの声を機械的に合成したものでしょう』 アドベンジャーが落ち着いた声で意見を述べる。それにしては偽者のタクヤたちの声には恐ろしいほど不自然さがなかった。 「きっと悪太だな!まともに戦っちゃ勝てねえもんだから・・・・!」 「けど、あいつが地底魚雷なんて使うか?」 「え?」 カズキは空影たちの言葉を何度も反芻して考えをまとめる。 「そんなもんでドラン達を倒せないのは、悪太ならよく知ってるはずだ」 ドランも大きく頷いた。 『私はこの事件に影に、何か別の存在を感じるのだが』 「別の・・・存在・・・・?」 タクヤは不意にわけのわからない不安に駆られた。 ワルターは届けられた新型メカを見上げた。黒武者と呼ぶに相応しい外見をした、通常のカスタムギアの半分ほどの大きさのロボットだ。 「おまえは我が意を継ぐ者ではなかったか」 直接会った父が言ったのはそれだけだった。そのただ一言のために、父は遠く離れた地にいるワルターを呼び戻し、政務の合間をぬって顔を見せた。ここ数年、親子らしい会話をしたことがなかったが、それ故その一言がどれほどの重みを持つのか。ワルターは思わず唇を噛んだ。 「出撃するぞ!」 黒武者が最初に攻撃を開始したのはアジプトだった。 タクヤたちの身の安全を考えて、ドランは家まで送っていくことにした。その最中だ。突如世界中で謎の空爆が起こった。都市や砂漠、密林など、予想もつかぬ攻撃ポイントと次の攻撃までのスピードに、次はいつ自分のいる場所が狙われるかと世界中がパニックになった。冷戦状態の国は互いに連絡を取って腹を探り合ったが、何処にもそれらしい動きは見当たらなかった。 ドランが受信したニュースをゴルドスコープに映してお子達はその騒ぎに見入った。 「アジプト、ジャポネシア、オリレンゾ急行があっという間に・・・・・!」 「すげえ早さだ」 どれもリアルタイムでニュースを見た。尋常ではないスピードだ。空爆された場所は数時間前に遡れば、サボンナ、エゲレスも含まれていた。 「あ、今アメリコーンが攻撃された!」 これで六ケ所目。ゴルドスコープの小さなモニターに、ファイヤーボールレースで有名なサーキットが無残な姿を映し出されていた。 「それって、全部パワーストーンが見つかった所じゃないか!」 カズキが空爆された場所の共通点を見つける。 「そうか!でもオイラたちが見つけたパワーストーンは七つだ」 「後一つは・・・・」 『ま、まさか・・・・!』 上空を黒い影がよぎった。ソニックウエーブでビルの窓ガラスが一斉に割れる。 『やはり日本に来たか!』 「どうするの?」 空爆を行っている相手は、明らかにパワーストーンを狙っている。だが、 「敵の正体がわかんなきゃどうにも・・・・」 ワルターの行動とも思えない。頭を抱える主を乗せたまま、ドランは急ブレーキをかけた。 「うわあああっ?!」 猛スピンから立ち直ったタクヤが頭を振りながらドランを怒鳴る。 「な、なんだよドラン!」 『ぜ、前方に・・・・』 ドランの斜め前には、狼にも似た犬を従えた一人の子供が立っていた。少年と呼ぶにはあまりに華奢で、少女というには女性の柔らかさが見当たらない。タクヤたちと同じ年頃の、水色の髪の子供だった。ドランが目の前で急ブレーキをかけたにもかかわらず、涼しい表情で黙っていて、ドランから下りたタクヤたちを見つめていた。 「いいことを教えてあげましょう、原島拓矢君」 「?!」 声さえ中性的だ。 「そして時村和樹君に、須賀沼大君」 「ええ?!」 「ど、どうしてオイラたちの名前を!」 タクヤは思わず目の前の子供を睨みつける。 「今度ゴルドランに合体するときは、注意したほうがよいでしょう」 「何い?!」 「どうしてゴルドランのことを?!」 「誰だ、おまえ!」 比喩ではなく空気がちりちりと肌や装甲を刺激した。僅かに子供の姿が霞んだのを、ドランは見逃さなかった。 『主よ、あの少年は実体ではない。非常に解像度の高い立体映像だ』 「立体映像?」 「こ、これがか?」 その言葉を証明してみせるかのように、子供と犬の姿にノイズが走る。 「もしかして、ニセのSOS通信もこいつのしわざか!」 「てめえ、いったい・・・・」 タクヤが締め上げてやろうと詰め寄った時だった。真上を先ほどの黒い戦闘機がよぎった。立体映像を破るほどの電磁波を伴っていたのは、この戦闘機だったのだ。 「あいつだ!」 「あれの仲間か?!」 カズキとタクヤが空を見上げている間に、少し早く視線を地上に戻したダイが素っ頓狂な声をあげる。 「ああっ、いない!」 「え?!」 タクヤとカズキも慌てて辺りを見回すが、誰もいない。 「あんの狼少年め! 何処行った!!」 これで正式に名乗りをあげても狼少年で通されてしまうだろう。 『いたな! 忌々しいお子達め!』 旋回しながら若干高度を落とした戦闘機から、聞き慣れた声がした。 「その声は悪太!」 「おまえだったのか?!」 『今までさんざん煮え湯を飲まされてきたが今日の私は違うぞ! 決戦だ! おまえたちと初めて会ったあの場所へ来い!』 ワルターの操縦する黒い戦闘機は、そのまま真っ直ぐ石環山に向かった。タクヤたちもすぐにドランに乗って後を追う。 「アドベンジャー、シルバーナイツ、空影! 石環山に集まれ!」 『了解!』 アドベンジャーはフルアーマーモードで、シルバーナイツは合体して石環山のキノコ岩に集結した。上空でずっと待っていた黒い戦闘機からワルターの声が響く。 「よく来たなお子ども、そして真の主を忘れた勇者ども! 今日こそ私の前に跪かせてやる! いくぞ!」 掛け声と共にワルターは変形レバーを押し込んだ。戦闘機が、黒武者へと変形する。 「ああっ!」 『!!』 タクヤたちは思わず息を飲んだ。色こそ全身黒いが、そのシルエットはあまりにもドランに似ていたからだ。 「はっはははは・・・・暗黒の力宿りし勇者! 暗黒剣士ワルドラン見参!!」 『バカな! 暗黒剣士?!』 ドランが人型に変形すると、尚更似ていると言わざるを得なかった。 「そう、ワルドランだ! 貴様を倒すために生まれたのだ!」 『お、おのれっ・・・・!』 地面が何箇所も盛り上がり、地中に隠れていたカスタムギアが銃を構えて勇者たちと相対する。ドランは竜牙剣を抜いた。 『いくぞ!』 『てやーーーーっ!!』 アドベンジャー、ゴッドシルバリオン、空影がカスタムギアを蹴散らしていく。ワルドランは真っ直ぐドランの前に立ちはだかった。無言で刀を振るうドランを、同じく抜いた刀でワルドランが受け止める。 『うう・・・・』 強い。力を緩め、相手の体制を崩し、飛び退き、勢いをつけて斬りつけるが、ワルドランのパワーも反応スピードも、ドランを大きく上回っていた。このまま一対一を続ければ間違いなく負ける。合体しなければ勝ち目はない。 「どうした、早くゴルドランになれ!」 ワルターは明らかに手を抜きながら戦っていた。挑発しているからには、向こうのボディにはゴルドランを上回るパワーが隠されているのか。それ以外にも、ドランは先ほど突如現れた立体映像の少年の言葉も気にかかっていた。 無数にいるカスタムギアが、アドベンジャーたちの攻撃網の隙間からドランの背中を撃った。 『おわっ?!』 「隙あり!」 注意の反れたところを、ワルドランが刀でなぎ払った。ドランの手から刀が弾かれた。 「ドラーン!」 キノコ岩の影から、ダイたちが叫んだ。 「今度ゴルドランに合体するときは、注意したほうがよいでしょう」 『う、うう・・・・』 「今度ゴルドランに合体するときは、注意したほうがよいでしょう」 「今度ゴルドランに合体するときは」 「注意したほうが」 「合体するときは」 「もらったーーーー!!」 動けなくなったドランに向けて、ワルドランが刀を突き刺す! 咆哮があがった。 『お、おお・・・ゴルゴン・・・・!』 ドランの身を案じたゴルゴンが、呼びもしないのに現れたのだ。金色の足にワルドランの刀が深々と突き刺さっていた。 「ちっ・・・」 ワルターは舌打ちすると刀をゴルゴンから抜いた。 『ゴルゴン・・・・わ、私のために・・・・・』 呼ばなかったことが悔やまれる。どうして頼りにしてやらなかったのか。 『よおーしゴルゴン、合体だ!』 「いけーーー!」 鼓舞するタクヤたちに、 「こい!」 舌なめずりをするワルター。ゴルゴンの体が展開する。足首が回転し、尾から腰にかけてが細い腕をカバーし、頑健な鎧を纏う肩になる。首から下が折りたたまれてスライドし、ドランがはめ込まれるスペースができる。 『とう!』 「もらった!」 変形したドランが蹴り落とされた。 『何だとおっ・・・?!』 ドランは地面に叩き落された衝撃でロボットへと姿を戻す。 「ははははは・・・・驚くのは早いぞ! とあっ!」 大きくジャンプしたワルドランは、その体をまた別の形へと変形させた。そして合体途中で動けないゴルゴンの、いつもはドランが納まる場所へとジョイントした。 「暗黒合体 ダークゴルドラン!!」 胸に紅いドラゴンのような翼を大きく広げた金色の姿もつ勇者が、ドランの前に降り立った。 『そ、そんな・・・・』 あまりのことに声の出せないドラン。 「あ、ああ・・・・」 タクヤたちも禍々しく生まれ変わってしまったダークゴルドランに愕然とする。兜となった赤い宝石のゴルゴンの瞳が、色を失った。 「ふっふふふふふ・・・・ついにやったぞ! ゴルドランの体は私のもの。私の意のままに働く、ダークゴルドランとなったのだーーーーっ!!」 『ゴ、ゴルゴンが・・・・』 ドランはゴルゴンを求めるように、力なく腕を伸ばした。 「だから忠告してあげたのに。ゴルドランに合体する時は注意しろと」 シリアスは暗い部屋でモニターを見ながらレイザーの頭を撫でた。 「ふっははははは・・・・あーっはっはっはっはっは・・・・!!」 封印が解かれた時のように、石環山の随所に雷が落ちた。そう、これはドランがゴルゴンを呼んだときに落ちたものと同じもの。雷はドランの象徴。ゴルゴンの金色の装甲は、その稲妻に応えるように輝きを増した。ワルドランと繋がったまま。雷の色はドランの金色ではなく紫だった。 『ゴルゴン・・・私だ・・・・私の声が聞こえるか・・・・』 水鏡に映った自分の姿を見たことならばある。だが、目の前にいるのは金色の一部に不自然な黒い翼をあしらった別のモノ。 ダークゴルドランの腕が動く。アームシューターの位置まで同じ。同じで当然。その腕は、ドランの時と同様にゴルゴンなのだから。銃口が真っ直ぐドランに向けられる。弾が発射されても、ドランは立ち尽くしてゴルゴンを見上げていた。 『ご、ゴルゴンよ・・・・』 『危ないでござる!』 間一髪、ドランは空影が救い上げたおかげで直撃を免れた。空影はドランを抱え上げたまま、ダークゴルドランを上空から見せた。 『ドラン、目を覚ますでござる! あそこにいるのはゴルゴンではござらん!』 紅い般若の面のようなダークゴルドランの頭部を守るのは、光を反射しない故に黒い、ゴルゴンの瞳だった。 カスタムギアを片付けたアドベンジャーとゴッドシルバリオンが、残ったワルドランの方に向き直り、体を硬直させた。 『あ、あれは・・・・』 『ゴルドラン?』 レッグバスターがゴルドランの様子を不信に思ったアドベンジャーとゴッドシルバリオンを攻撃する。 『うわああああ!!』 『く、くそ・・・!』 すぐに状況を理解した二人は、まっすぐダークゴルドランに向かった。 『行くぞ!』 『おう!』 ゴルドランは飛べない。二人は空からダークゴルドランに接近した。だが飛んだ。ダークゴルドランはアドベンジャーとゴッドシルバリオンの前に、黄金の壁のように立ちはだかった。上空でそれぞれの片手でアドベンジャーとゴッドシルバリオンの喉元を捕まえる。 『ぐっ・・・・』 『うう・・・・』 「食らえ」 冷たいワルターの声に、アームシューターが応えた。遥か上空から、キノコ岩の側に叩き落される。 「みんな!」 「くそう!」 「勝ち目ないよお・・・・」 「はっはっはっは・・・・無敵無敵! 私は無敵の力を手に入れたのだあ!」 『ご、ゴルゴンよ・・・・』 『ドラン、しっかりするでござる! このまま手をこまねいているだけでは、ゴルゴンはどうにもならん!』 空影の言葉に気を少し気取り直したドランは、まだ震える手で刀を抜いた。 『頼むぞ空影!』 『心得た!』 鳥形に変形した空影が、ドランを乗せて飛翔した。ゴルゴン自身は飛ぶことができない。先ほどダークゴルドランが飛べたのはワルドランの機能だ。攻撃を受け、ドランは正確な判断を下せるようになった。 『敵のマシンさえ破壊すれば、ゴルゴンの呪縛は解けるっ・・・・!』 「しゃらくさい!」 アームシューターが迎撃に発射されるが、空影はそれらを全て避け切った。 『竜牙剣! イナズマ斬りーーーー!!』 「スーパー竜牙剣!」 ダークゴルドランが刀を抜いた。 『何?!』 「まさか?!」 「一刀両断斬りーーーーー! っでやあああーーーー!!!」 『うおおおおおおおっ・・・・・!!』 一瞬の躊躇を振り切ってドランもダークゴルドランに突っ込む。 ドランは上から、ワルターは下から、金と黒が激突した。 「でえええええい!」 『うおわ・・・!』 爆発するドラン。 「ああっ!!」 バラバラにはならなかったものの、ドランの体には無数のヒビが入った。 「勝ったぞ・・・・・・私は勇者に勝ったぞ! はっははははは・・・・!」 人造の物ゆえ燃料のなくなったワルドランを案じ、ワルターは高笑いを残して去っていった。 「そんな・・・・」 「ドランが・・・・」 「ドラン、が・・・・」 山の斜面の向こうに見える海に、ドランは壊れた人形のように墜ちていった。 「ドランが負けたなん・・・・・そんなの、そんなの・・・・ウソだあーーーーーっ!!!」 零れる涙にも気づかず、タクヤたちはドランを追って海に向かって走り出した。 「わーっ!」 「ワルター様ーっ」 「おめでとうございますーー!」 厳しい表情でダークゴルドランから下りたワルターの目には、すっかりパーティー会場になったデスギャリガンの中は空々しく見えた。紙吹雪が飛び、祝いの文字の書かれた垂れ幕が下がり、クラッカーから紙テープが飛んだ。パーティー帽子をかぶったカーネルが、満面の笑みでワルターに近寄る。 「若、おめでとうございます! 見事な勝利で。真にご立派でした! ささっ、お祝いのパーティーの準備もしてございます。爺は、爺は嬉しくて涙が出てしまいましたぞ〜〜〜〜〜!!」 その呑気さがワルターのささくれた神経を逆撫でした。自分は今までこんな呑気なことをしていたのだ。父の気も知らずに。 「何を浮かれておる!」 思わずカーネルを突き飛ばす。 「は?」 「戦いは終わっておらん! すぐに捜索隊を向かわせ、ドランの残骸を回収せい!」 長年仕えたカーネルは、突き飛ばされた驚きや怒りをすぐに隠し、表情を切り替えた。 「ははっ。ではせめてお父上にご報告を・・・」 「まだだ!」 (度重なる勇者への敗北・・・・私は父上の名誉を汚してきた。今度こそ失敗は許されんのだ) 「ワルドランの燃料補給を急がせろ!」 「ははっ」 「全ての勇者を手に入れるまで、我らに勝利はないものと思え!」 アドベンジャーはショックを受けた主たちを抑え、ワルザック共和帝国の外れまでつれてきた。荒涼とした荒地がどこまで続く侘しい場所に、崩れ落ちた石柱が何本か建っていた。 「ここは・・・ストーンサークル?」 月も星もない夜の闇で見えにくいが、それは確かにストーンサークルだった。 『ゴルゴンは目覚める前、ここに眠っていたのでござる』 ここまで黙って水先案内を務めていた空影が口を開く。更に付け加えて言うのなら、本当は丘の上に建てられた神殿の地下だったのだが、ゴルゴンが復活した際に崩れかけた神殿を丸ごと破壊してしまったため、辛うじて彼の封じられていたストーンサークルだけが残っていたのだった。もちろん、そんな事情は空影とて知らない。ただ合体によって記憶をある程度共有できたから、この場所を知り得ただけである。 「で? だからどうしたってんだよ!」 ドランがいなくなった所為でイライラしているタクヤが声を荒げる。 『ストーンサークルの力で、ゴルゴンを封印します』 ジェットシルバーが仲間内で決めたことを主に告げた。本当は主に相談なしでそんな決定をするなど間違っていると思うのだが、彼らの身の安全も考えると、ゴルゴンを制御できるドランがいない状態で交戦するわけにはいかなかったのだ。 「でも、ストーンサークルの力って言っても・・・・」 「壊れてるじゃないか」 カズキたちもその辺の事情は察せる。だが二重の六角形に配置された石柱は朽ち欠け、大きさが揃わないどころか数が合わない。 『我々がストーンサークルの一部となるのです』 『オレたちの全エネルギーを、ヤツにぶつけるんだ!』 ジェットシルバーに続いてスターシルバーも決意の拳を握り締める。 「そんな! 危ないよ!」 『ヤツを放置しておく方が危険です!』 『ここで食い止めなくちゃ!』 ドリルシルバーもファイヤーシルバーも、止めさせようとする主をなんとか説得しようとする。それに手を貸したのは珍しく空影だった。 『ドランも我々もレジェンドラの勇者だ』 「!」 タクヤたちは弾かれたように空影たちを見上げた。そんな強い使命感を彼らが持っているということを失念していた。 『力尽きてパワーストーンに戻ったならば、再び主たちに、目覚めさせてもらいだいでござる』 そこまでの決意を止める術を、主たる彼らは持たなかった。 『む、来たぞ!』 沈黙をアドベンジャーが破る。上空に現れたデスギャリガンから、ワルターの声と共にダークゴルドランが降ってきた。 「勇者ども、覚悟はよいな! 手加減はせんぞ! 貴様ら全員、まとめて葬ってくれる! 飼い犬を失い、惨めに敗れたドランのようにな!!」 勇者たちは互いに頷きあうと、主たちを遠ざけた。 『許せゴルゴン! ギャラクティカバスター!』 ダークゴルドランは宙を飛んでそれをかわした。 「すきあり!」 アドベンジャーの背後に回り、高エネルギーを放出した直後で動けないアドベンジャーを斬りつける。 『おわっ!!』 「ふっはっは・・・・・死ね」 アドベンジャーの背中に突きつけられたアームシューターが距離ゼロで火を噴いた。 「アドベンジャー!!」 声も枯れんばかりに主たちが叫ぶ。 「思い知ったか! ふはははは・・・・・」 だが、それはアドベンジャーの捨て身の作戦だった。自分を攻撃するために動きの止まったダークゴルドランを掴み、ストーンサークルの中央に向かって投げつける。 「何っ?!」 『今だ!』 『おう!』 『いくぞ!』 両腕を胸の前でクロスさせ、勇者たちの体から黄金の光が立ち上る。生き残っていた石柱も連鎖的に同じ反応をしはじめ、光の帯で互いが繋がりあう。ゴルゴンの体がそれに反応し、ダークゴルドランはずぶずぶと魔方陣の浮き上がった地中に引きずり込まれはじめた。 「うああああ・・・・ば、バカな・・・!」 焦ったワルターがいくらレバーを引いても全く反応しない。 「がんばれ、みんな!」 焦燥感にかられながらもカズキが叫ぶ。 「でも、ゴルゴンが・・・・」 「ゴルゴン・・・・」 結界に捕らわれたゴルゴンは、強烈な放電に何かを思い出していた。探しものをしていた時のことを。親であり、子であり、恋人のような存在を。自分が探していたもの、自分を呼んでくれたものも、同様にして封じられていたことを。 タクヤたちの見守る中、ゴルゴンの瞳からまばゆいばかりの光の珠がゆっくりと現れた。 「あ、あれは・・・・なんなんだ、あの光は?!」 『ご、ゴルゴンだ・・・・』 アドベンジャーは傷ついた体を引きずって主の側にきた。彼らだけはなんとしても守り通さねばならない。 『あれは、ゴルゴンの・・・たま、し・・・ああっ・・・・』 黒鉄の巨体が倒れる。 「アドベンジャー!」 「しっかりしろ、アドベンジャー!」 光の珠は一旦何かを探すようにふわりと浮き上がると、そのまま勢いよく空に飛んでいった。石環町の海へ。 「謎のエネルギー反応が!」 デスギャリガンのオペレーターがカーネルに指示を仰ぐ。 「構うな! 若をお救いするのじゃ!」 「ラジャー!」 光の珠は探し当てた。大事な人。大切な人。体の一部。心の一部。 太陽光の射さない暗い海の底に突如現れた光の珠は、温かく柔らかく、傷ついたドランを照らした。 微かにドランの唇が動く。ひび割れた瞳に生気が戻った。 『うわあーーーー!!』 動きの取れない空影、シルバーナイツをカスタムギアが攻撃する。それでも立ち続けようとするが、集中砲火を浴びて、とうとう倒れ伏してしまった。石柱が破壊され、魔方陣が消えてしまう。ダークゴルドランが半分地中に埋まっていた体を地上に引き上げた。 「は、ははははは・・・・! くだらん策を練りおって! しかし、それも終わりだ」 一歩一歩ゆっくりと、倒れて動けない勇者たちにダークゴルドランが近づいていく。 「み、みんな・・・・!」 「とどめをさしてくれるわ!」 ダークゴルドランと勇者たちの間に地割れが起こった。それは仲間を守るように。 「な、何だ?!」 「ああっ?!」 いつものように、そこからは黄金の光と共にゴルゴンが現れた。否。ゴルゴンではない。大地がゆっくりと地上に姿を押し出したのはドランだった。先ほどゴルゴンの瞳から出た光の珠を持ったドランを守るように、ゴルゴンの姿が重なった。 『ゴルゴン・・・・』 「ドラン・・・・」 無事だったと思ったドランは、少し様子がおかしい。タクヤたちは不安げにドランを見あげた。 『ゴルゴンを返せ・・・・私の、ゴルゴンを・・・・』 「そ、そんな・・・・」 ゴルゴンが目の前にいる。その奇蹟にワルターは畏れすら感じた。 「ええい、スーパー竜牙剣!」 迷いを振り切るように刀を構えるワルター。一度は勝ったはずなのに、何故か勝てる気がしない。 ドランの手の中で、光の珠が自らの意思で姿を変えた。光り輝く一本の刀に。 『いくぞ、ゴルゴン・・・・!』 ドランは手の中の相棒に声をかけた。 『どおおおおおおお!!』 「一刀両断斬りーーーーーーーッ!!」 再び両者が激突する。 「私は負けるわけには、いかんのだあああああ!!」 ワルターが吼える。 『でやあああああああ!!!』 「ああっ・・・・」 タクヤたち、傷ついた勇者たちが見守る中、光が飛び散り、二つに分かれた。空中でドランがバランスを崩す。 「はっははは・・・・! これでわかったか! 私は無敵・・・・?!」 バチッとコンソールがスパークし、エマージェンシーシステムが作動する。 「ば、バカな! 私は無敵の・・・・」 ゴルゴンの胸で、ワルドランが爆発した。 「何故だ? 何故勝てぬ?! 奴らを倒すことは不可能なのかあッ?!」 自動操縦のコックピットで、ワルターは血の出るほど握り締めた拳で、何度も膝を叩いた。 光る刀が姿を消し、着地したままじっと炎に包まれたゴルゴンの落ちた方向を見ていたドランは、ふと、我に返った。 『あ、主たち・・・・』 ようやく自分たちを見てくれたドランに、タクヤたちは夢中で駆け寄った。 「ドラン・・・・! 心配させやがって!」 泣きだしそうになるのを無理に我慢して、タクヤが鼻の下をこする。それを見守っていたかのように、ゴルゴンの咆哮が響いた。 『ご、ゴルゴン・・・・!』 爆発の炎の影から変形を解いたゴルゴンが、ドランに向けて微笑むようにまた鳴いた。 『ゴルゴーン!』 シリアスは再び父に謁見を求めた。 「勇者たち七体のオーラ振動数・・・・全てコンピューターに入力しました。これを元に、最後のパワーストーンを発見するのは至極容易。必ずや勇者を手に入れてみせましょう。 無能な兄上に代わって」 |
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