The Brave of Gold GOLDRAN





「うわああああ!!」

 タクヤがソファの上で喉をかきむしった。
「しっかりしろよ」
 呆れたカズキの声が、テーブルの上につっぷし手を伸ばすタクヤの上に降る。
「いくら腹が減ってるからって」
「その芝居はオーバーじゃない?」
 おバカな漫才に水を差すアドベンジャーの声が響く。
『次の惑星、ロボラルドに到着します』
「いやったー!食いモンだ!」
 喜び勇んだ時だった。ドゴーン!とアドベンジャーを衝撃が襲った。
「うわあ?!」
 無数の攻撃用デバイスがぐるりと周囲を取り囲み、アドベンジャーは集中攻撃を受ける。
『うおおお?!正体不明の戦闘機軍が攻撃を!』
 モニタに敵を映す。デバイスはボールにワルター親衛隊のサングラスをかけた姿が一番似ている。タクヤはシートの後ろを振り返った。
「ドラン!」
『心得た!』
 主が酸欠になってはいけないので、ドランとお子達の間に隔壁が下りる。ドランは真空の宇宙へ出撃した。竜牙剣を抜いて次々に攻撃用デバイスを撃破していく。
「いいぞ、ドラン!」
「でも、あいつら一体・・・・・」
 不意に感じた強烈な威圧感に、お子達は左舷の窓を見た。そこにはなんというか・・・・ダースベーダー(わかるよね?)っぽい巨大な顔が。ゴリラも混じっているかもしれない。
「な、何だありゃ?!」
 顔の口が開き、奥から巨大な砲塔がせり出してくる。エネルギーが高まっていくのがわかった。レールから外れるわけにもいかないアドベンジャーが焦る。
 そしてついに主砲が発射された。
 直撃だった。
「うわあああ?!」
『主ーー!主!!』
 惑星の引力に引かれて落ちていくアドベンジャーに、ドランの動きが止まる。
 顔の中の司令室では、目標を見つけた狩人がドランを真っ直ぐ指差した。
”キゲウホキンゼ!”
 そこへできた隙にドランは集中砲火を浴びて、惑星ロボラルドに向けて落下していった。



誕生!子連れ勇者!!








 アドベンジャーは荒野に墜落した。目も当てられない横転である。中ではお子達が一塊になって呻いていた。
「痛たたた・・・・・」
「なんなんだっちゅーの!」
「アドベンジャー、大丈夫か?」
『はい、一時的に機能が停止しましたが、大丈夫です!』
 意外と力強い返事に安心し、ハッチを開かせる。
「ここがロボラルドかあ」
「なーんにもねえトコだな」
「西部劇の荒野みたい」
「よく助かったな」
 カズキが軽くため息まじりに呟く。
「「「主人公で良かった〜」」」
 ザっと遠巻きに周りを怪しい影が囲んだ。開いたハッチによりかかって足をぶらぶらさせているタクヤは、まだそれに気づいていなかった。
「でーもー、食いモンなくちゃ、主人公も飢え死にしちゃうよ・・・・。
 ?! ・・・・・なんだーーーー?!」
 影が見える範囲まで迫ってきていた。よく見るとロボットだ。数がどんどん増えていく。無表情なだけに恐い。
「「「ひいいいいいいい・・・・・!」」」
「こ、こいつらいったい・・・・」
「もうダメだ〜〜〜〜〜〜!」
「なんだかわかんないけど・・・・」
「オイラ達、どうなっちゃうんだ〜〜〜〜〜〜〜?!」
 タクヤ達は身を寄せ合って絶叫した。



『あ・・・・』
 ドランが目を開けると、木の梁が目に入った。
「気がつきました?」
『そなたは?』
 洗面器にタオルを浸して持っているロボットの女性がいた。寝たままでは失礼と、起き上がろうとするドラン。
「あ、まだ起きてはいけませんわ」
 ドランの上に乗り、起き上がろうとするところを顎を押して無理に寝かせる。
「あなたは大怪我をして倒れていたのですよ」
『そなたが、助けてくれたのか?』
 体を見ると右腕を吊っている。左腕と右足に包帯。更に周りを見渡すと、そこは馬小屋だった。
「こんなところでごめんなさい。あなたは、大きいから。
 私はマリア。ここは私の牧場だから、安心して休むといいわ」
 そこへ聞こえた馬の嘶きに、マリアは血相を変えて外に出た。外にはゴロツキのジョーと手下が二人、馬に乗っていた。
「あ、あんた達!」
「へへっ。この牧場の権利はオレにあるんだぜ。さっさと明け渡しな」
 馬から格好をつけて飛び降りたジョーに、マリアはマスケット銃を向けた。
「帰りなさい!さもないとどてっ腹に風穴が開くわよ!」
「ぶっそうなものはしまいな、レディ。法律的にもここはオレたちが・・・・・」
「ハッ!みんなお父さんから汚いやり口で騙し取ったくせに!」
「ロボット聞きの悪いこと言うじゃねえか」
 銃を構えていても震えるマリアを見て
「おめえさんには撃てやしないさ。いい加減に強がるのは、よすんだな!!」
 殴る。
「ああっ!」
 銃を取り落とし、マリアは叢に倒れこんだ。
「くうっ」
 ジョーはマリアの腕を引っ張って立たせた。
「この土地で一生暮らしたいんだろう?だったら強情張らずに、このオレと一緒になるんだ!」
「イヤーーーーー!!」
「その気の強さが、ハハっ!たまらねえぜ」
 いやらしく顔と近づけるジョーに
「ケダモノ!誰があんたなんかと!」
 必死に顔を背けるマリア。
『やめろ!』
「ん?」
 辺りを見回すが、声はすれども姿は見えず。その時馬小屋から手が、足が生えた。ぬっとジョーの上に影が差す。
「ギャーーーーーー?!」
『黄金剣士ドラン!』
 馬小屋を壊して。
『見参!!』
「な、なんでえ、この大男は?!」
『その娘から手を引き、おとなしく去れ。さもなくば・・・・』
 刀の鯉口を切る。
「へっ、大バカ野郎め!剣で銃に立ち向かおうってのか?」
 ジョーがホルスターから銃を抜く。銃口が火を吹いた。だが、ドランの装甲の前には、子供が石つぶてを投げつけたにも等しい。そのまま竜牙剣を抜くと、切っ先をジョーに突きつけた。
「あ、お・・・・ちょ、ちょっとタンマ・・・・」
 ドランの目が冷たく光る。
『去れ』
「うんぎゃ〜〜〜〜〜〜!!憶えてろ〜〜〜〜〜〜!!!」
 ジョーは馬に飛び乗ると、ほうほうの体で手下と共に逃げ帰った。
『娘よ、大丈夫か?』
「え、ええ・・・・おかげで助かりましたわ」
 と言ってドランの後ろに視線をやった。
「納屋はバランバランですけど・・・・・」
『す、すまぬ・・・・』
 ドラン、冷や汗たらり。
「あ、あなたは一体・・・・」
『うむ。旅の途中、何者かの攻撃を受け・・・うッ・・・・!』
 不意に眩暈を起こしたドランは、片膝をついて額を抑えた。慌てて駆け寄るマリア。
「大丈夫ですか?」
『まだ、エネルギーが・・・ああっ・・・・』
 更にバランスを崩してしまう。マリアにドランの唇がせまる!(笑)
「いけませんわ・・・・あ、そんな・・・あ、ああ・・・・」
 マリアの心境が絵になるというのなら、バラに埋め尽くされた世界が生じた。膨大なドランのデータが自分に転送されてくるのが、はっきりとわかる。
『す、すまぬ。大丈夫か?』
 眩暈から立ち直ったドランは、潰してしまったかどうか、マリアが心配になった。
「あ、私は・・・・私は・・・・・」
 一見すると無事なようだが、お腹が脈打っている。
『どうした?どこか故障したのか?』
「ふるふる」
 マリアは顔を背けて首を振った。
『そなたの腹部から聞こえるようだが・・・・』
「こくこく」
 再度首を振るマリアは、心なしか赤く見えるようだ。どうやって色素を変化させているのだろう。
『いったい、何の・・・・』
 音なのか?と訊ねようとしたところを、微かに震えるマリア声で遮られた。
「わ、私の・・・・種族、保存装置・・・・」
『種族保存装置?』
 初めて聞く単語に、ドランは両手を広げて肩を竦め、首をかしげた。


 一方こちらは、まるで西部劇のような街を行くお子達。人間が珍しいのか、視線を受けまくりである。
「参ったなあ・・・・ロボットばっかりだぜ」
「人はいないのかなあ?」
「とにかく、腹へって死にそう」
 お子達は情報を集めるため、保安官事務所に入った。
「ほー、ほう。そりゃお困りだろうね」
 葉巻を持って回転椅子でくるりと振り返ったのは。
「保安官もロボットぉ?」
「うんうん。この星にはロボットしかおらんよ。
 うんうん。おまえさん達を攻撃したのは、おそらくアルカリ星人。我々ロボットを捕まえては、奴隷として他の星へ売り飛ばす、悪魔のような連中じゃよ」
「「「アルカリ星人?!」」」
 外見的特徴を述べると、紫色のトリがサングラスをかけ、体は紫と黒のボーダーらしい。
「わしらには太刀打ちできず、お手上げなんじゃよ。うんうん」
 のんきに両掌を天に向けた。そこへ、ぐ〜っとタクヤの腹の虫が鳴る。
「ところでなんか食いもんなーい?」
「まあ、ないこともないが・・・・」
 保安官は表に出ると、にんじんを籠に入れて持ってきた。もちろん生だ。だが、タクヤは躊躇することなく手を伸ばした。呆れているカズキとダイの視線もなんのそのだ。
「ハラ減ってると、にんじんばっかりでもうまいうまい」
「はん。馬の餌でも気に入ったかのう?」
 コケるタクヤ。そのまま凶悪な視線で保安官を睨みつける。
「てんめー、馬と人間様を一緒にするない!」
『主!聞こえるか?!主!!』
 そこへ切羽詰ったようなドランの声が飛び込んできた。タクヤの表情が一変する。
「ドラン!無事だったか!」
『まずいことになった。とにかく、すぐ来てくれ!』


 所変わってマリアの家。陽は既にとっぷりと暮れている。普段は人気の少ない家の前に、蒸気機関車が停車していた。窓から家の中を心配そうに覗いている大きな人はドランだ。その後ろには、何事かと好奇心丸出しの勇者達が勢ぞろいしている。
「「「に、妊娠?!」」」
 ムンクの「叫び」も吹っ飛ぶ形相で、お子達は絶叫した。ベッドで安静にしているマリアが、愛しそうにお腹をさする。
「種族保存装置・・・・私たちは、体内に小さな工場があって、子孫を残すことができるのです」
「ホンマかいな」
「そーかいな」
「ところでそれって」
「「「誰の子だ?」」」
 お子達はそろって窓を見た。
『ギクッ!』
「もちろん、ドラン様の・・・」
 やっぱりマリアも窓を見る。
『い、いや・・・私は知らん!潔白だ!』
 両手を振って後辞去るが、不意に強烈な気配を感じて振り返ると、そこには仲間たちの冷たい視線があった。さっきまで機関車だったアドベンジャーも人型になっている。
『そ、そんな目で見るなあ!』
 視線は更に強くなり、ドランは責められているように一歩、また一歩と、追い詰められた。何もやっていない(ハズ)なのに、口からはしどろもどろの弁明ばかりが出てくる。
『じ、事故なのだ!戦いで疲れていて、それで・・・・あの、その・・・・』
「ドラン、医者を呼べ!!」
 タクヤが窓から顔を出して怒鳴った。
『医者あ?』
 鸚鵡返しに問う声が裏返っている。
「陣痛が始まった!」
「産まれるぞ!おまえの子供だ!」
 痛みに暴れるマリアを押さえつけ、ダイとカズキも叫ぶ。
『わ、私の、子供お?!』
 夜空にきらりと流れ星。




 
 夜明けと共に産声が。
『う、産まれた・・・・・・。
 私は子持ちの勇者になってしまったーーーーーーーッ!!!!』
『おおーーーー!!』
 出産の感動に仲間達は暖かい拍手を送った。真っ先にドランの声をかけたのは、ファイヤーシルバーとスターシルバーだった。
『男の子かにゃ?』
『いんや、女の子かもよ?』 
『『どっちがいい?』』
『いや、私は・・・・』
 返答に詰まるドランに、別のところから声がかかる。タクヤだった。
「ドラン、見ろよ」
『おおっ!』
 期待に胸を膨らませ、レオン達が主の方を振り返る。先頭に立つドランはだらだらと脂汗をかいていた。
「ほーら、元気な男の子だぜ」
「ばぶ」
 タクヤの腕の中でおくるみに包まっているのは、間違うかたなきドランの子だ。まだ子供のせいだろうつぶらな瞳と、ドランの赤い色の部分が青いという以外、相違は見られなかった。
『はっはっは!ドランにそっくりでありますな!』
 ドリルシルバーがドランの肩に手を置く。
『ど、どうも・・・・』
「喜ぶのは早いぜ」
 続いてカズキが出てきた。腕にはやはり何かを抱いている。緑色だった。
『双子だ・・・・』
 レオンが感嘆の声をあげた。
『いや、三つ子でござる』
 空影が真っ先に、布に包まれた橙色の赤ん坊を抱いて出てくるダイを見つける。
『おお・・・・』
 ドランは膝と両手をついた。体に力が入らない。
『なんということだ・・・・レジェンドラの勇者ともあろう私が、三人の子持ちとは・・・・』
「いいえ」
『え?』
 ドランが面を上げると、出産後にもかかわらず疲れた様子もみせないマリアが満面の笑みを湛えて立っていた。腕にはやはり白い布に包まれた赤ん坊が。頭には可愛らしいリボンとピンクの宝玉。
 女の子だ。
「四つ子です」
 ドランはすっ転んだ。
『おおーーーー!』
 歓声があがる。
『すごいな。どうすれば四つ子なんて・・・・』
『レジェンドラの超パワーか?』
 ジェットシルバーがアドベンジャーに耳打ちするが、ドランにはまる聞こえだ。身悶えして耐える以外の術を、ドランは知らなかった。
「嬉しい、四人もの子宝に恵まれるなんて。
 幸せな家庭を築きましょうね、あ・な・た?」
 マリアの熱い視線に、『おめでとう!』『うわー』『がんばれよー』と仲間達から暖かい声援が飛ぶ。
『ドラン、今日からおまえはパパだ!』
 アドベンジャーの声援。
「パパドラン!」
 タクヤが決定を告げた。
「『パパドラン!』」
『ぱ、パパ・・・・』
 子宝に恵まれた嬉しさより、絶望がドランを支配した。




 居間ではマリアが編物をしている。ドラ代は両手に毛糸を巻きつけ、マリアの側でお手伝いをしていた。窓の外では馬小屋の修理をしている父と兄の姿が見える。
「ドラ代はお外で遊ばないの?」
「うん。ドラ代もママみたいに美人に産まれたかったよ」
「まあ、この子ったら。そんなことを言ったらお父さんが悲しむわ」
 トンカチを持つドランの肩から、ドラ太郎、ドラ次郎、ドラ三郎が次々と滑り落ちてきた。体の大きな父親は立派な遊び道具だ。
『やめなさい、ドラ太郎、ドラ次郎、ドラ三郎!』
「父ちゃん」
「あそんであそんで」
「おウマさんおウマさん」
『父ちゃんは今、忙しいんだ!』
 ドランがたしなめるが、子供はそれぐらいでは怯まない。
「あそんでー」
『ダメ!』
 ちょこちょこ駆け寄るのを軽くつま先で転がす。
「あそんでー」
『ダメ!』
「ぼくもやって、ぼくも!」
『ダメったらダメ!』
 ころころ転がるのが面白いのか、子供たちは再びドランにじゃれついた。
『父ちゃんの言うことがきけないのか。
 めっ!』
 途端に子供たちの瞳に大粒の涙が浮かぶ。
「「「う、う・・・うわーーーーん!!!」」」
 ドランはトンカチを放り出し、慌てて子供達を宥めにかかる。
『こら、泣くな!泣かないでくれ!』
 背後でバタンと家のドアが開いた。
『ギクッ!』
「あなた、何やってるんですか!子供たちを泣かせるなんて!」
『いいや、これは・・・・』
「納屋の修理も終わってないし!父親なら父親らしいことをしたらどうなんです?!」
『面目ない!』
 勝手がわからぬドランは、平謝りするしかなかった。子供と言っても主とは違うのだ。
 マリアに土下座している姿を遠目にみているお子達は、こっそりため息をついた。
「ドランのやつ、すっかり尻に敷かれてるな」
「子持ち亭主の悲しい性だね」
「しょーがねえ、ドランには黙っておこうか。夕べ山の向こうに謎の発光体が落下したこと」
 それは、再び食料がないかと街に出かけた時に聞いた情報だった。

『チェーンジ!』
 掛け声も勇ましく、ドランは車に変形する。
『他に買い物は?』
「七丁目のドラッグストアで缶詰が安いのよ」
『そうか』
 ドラッグストアの前でマリアを下ろす。体の上には大量の買い物袋が積まれていた。
「でーる!おんも〜〜〜〜!」
 外に出たがる子供達の前で、パタンとドアが閉じる。
「ちょっと買い物の間、子供たちを見ててくださいな」
『なあ、なるべく早く帰ってきてくれよ。
 あ〜あ、勇者の私が子守りか・・・・』
 ドランは深いため息を吐いた。
「父ちゃん」
 この声はおねだりの声だ。主も似たような声を出すのでよくわかる。
『ダメだ!ママに叱られてもいいのか?』
 ハンドルの辺りに交差点をいくつも浮かび上がらせる。静かになった車内で、不意にドラ太郎が手をあげた。
「父ちゃん、おしっこ」
「ぼくも」
「ぼくも」
『な、何いっ?!
 えーと、えーと・・・・早く表で!』
 子供達を外に出してしまってから気づいた。
『? おしっこ・・・?ロボットが?
 ああーーーー!しまったーーー!こら!待ちなさい、おまえたち!!』
「「「ちぇーんじ!」」」
 自由になった子供達は、なんと車に変形した。
『はあっ・・・・・?』
「わーい、わーい!ぶーん、ぶーん!!」
 縦横無尽に遊びまわる。子供達のあげる砂煙は、すぐに街の雑踏にかき消された。
『待ちなさいってばーーーー!!
 どうして父ちゃんの言うことが聞けないんだ・・・・』
「あなた!」
『ぎくっ!』
 静かな怒声に振り返ると、マリアがドラ代を連れて仁王立ちになっていた。
「子供たちの世話もロクにできないの?!」
『すまない!』
 巨人が土下座して平謝りする姿は、街の人々の目にはさぞ奇異に映ったろう。
「私たちは先に帰ってるから、ちゃんと子供たちをつれてくるのよ!いいわね?!あなた!」
『はいっ!』


 ジェットシルバーとレオンは情報を交換する為に平行して飛んでいた。
『主、こちらは特に変わったものを発見できない』
『こっちも異常は』
『ナッシングだよ〜ん』
 スターシルバーに続いてファイヤーシルバーが通信をよこす。
『地中にも変わりはありません』
『やはり昨夜落ちた発光体というのは、ただの隕石では?』
 空影が主に疑問をなげた。流れ星が落ちたと言われる付近で、自らも調査をしている主は首を横に振った。
「そうかなあ」
「隕石だったら跡があるはずだぜ」
「やっぱり、アルカリ星人の宇宙船かなあ?」
「やつらだとしたら、ほっとけないぜ!この星もやばいし、またオイラたちを・・・・」
 ブルルと馬の鳴き声がした。
「あん?」
 崖下を覗き込むと、岩陰に馬3頭繋がれていた。
「ウマそうなウマ」
「「タクヤぁ・・・・」」
 タクヤの尻尾髪が左右に揺れた。
 変わりばえのない荒野で見つけた動く物体に、お子達は崖を滑り降りてみた。ぼそぼそと話し声がする。聞きなれない言語に、近くに寄って耳をそばだてた。
”ニナ、カウトンホハレソ?”
「でっけえロボットが全部で八体。確かに見たんですぜ」
 お子達は見たことがないので知らなかったが、 話をしているのはジョーとアルカリ星人だった。
「そうそう」
 ジョーの手下が相槌をうった。
「あれはきっと高く売れやすぜ。へっへっへっへ・・・・」
「あいつ、ドラン達のことを・・・・!」
「アルカリ星人を手引きしている情報屋か!」
 かちゃりと冷たい音が耳の側で響く。予想を立てて振り返ると、予想通り銃を突きつけられていた。外見からしてアルカリ星人だろう。
「あ・・・・」
”ロゲアヲテ”
 名前はわからないが、とにかくアルカリ星人だ。ここでは仮にアルカリAとしておく。
「あん?こいつ何言ってんだ?」
”ロゲアヲテ!”
「なーんですか〜?」
 タクヤはわざとらしく耳に手をあて、アルカリAに近づいた。
”イオ!ヨダンテッロゲアヲテ!!”
「マンガだと、宇宙人も地球の言葉喋るのになあ」
「しかも日本語だよね」
 アルカリAはとうとうぷっつんしたのか、銃を乱射し始めた。
”ロゲアヲテ!ロゲアヲテ!ロゲアヲテ!”
「こういう場合、つかまってやるのがスジってもんだろ」
「くっそう、仕方ねえなあ」
 タクヤ達はカズキの提案に、しぶしぶ両手を上げた。
”シヨシヨ・・・・”
 アルカリAは、満足したように頷いた。
 お子達を連れ込んだアルカリ星人の宇宙船が、地表に姿を現した。


「ロボ子さん・・・・」
「ロボ男さん・・・・」
「「種族、保存・・・・・」」
 暗くムードを高めた部屋のカーテンがいきなり開く。
『息子を見ませんでしたか?』
「「どっひゃ〜〜〜〜?!」」
 聞き込みまでして調べているというのに、一向に子供達の行方はわからない。
『まったく、どこへいったんだろう・・・・? ドラ太郎、ドラ次郎、ドラ三郎!
 ?!』
 ビームが見えたのは錯覚ではなかった。街が襲撃されている。瓦礫の間を逃げ回る人々の上に、キャリアービームが降り注ぎ、宇宙船に吸い込んでいく。宇宙船の形には見覚えがあり、その行為も主に聞いたアルカリ星人そのものだ。
『おのれ、アルカリ星人め!酷いことを・・・・!』
 怒りに燃える瞳でその光景を見ていたドランは、吸い込まれる光の中に泣き叫ぶ子供達の姿を見つけた。
『あ、あれは・・・・?!ドラ太郎、ドラ次郎、ドラ三郎っ!!
 私の息子を返せーーーーー!!』

 アルカリ星人と共に宇宙船でモニタを見ていたジョーは、地上で叫ぶドランの姿を見つけた。
「出やがったな、あの野郎!
 アルカリの旦那、こっ酷く痛めつけてやってくだせえ」
”イサナセカマ!”

『ドラーン!』
 アドベンジャーの声に振り返ると、既に合体を完了している仲間達が駆けつけた。
『ゴルドシーバーの電波があの中から!主たちも囚われている!!』
 悪いことは重なるものだ。いや、この場合手間が省けたとするべきか。
『ドラン、合体でござる!』
 空影に促され、ドランはゴルゴンを呼んだ。合体して街を去ろうとする宇宙船を追いかける。
『主を返せーーーー!』
『息子を返せーーー!!』
 口が開き、件の主砲が表出した。
『うぐわっ!!』
『大丈夫か?』
『なんと強力なビームだ』
 宇宙船の頭部が開き、そこから出てきた戦闘用デバイス軍がぐるりと辺りを囲んだ。逃げ場のない勇者達を容赦ない攻撃が襲った。

”アッハッハッハッハッハ・・・!”
 アルカリ星人の嘲笑は、船内のタクヤたちにも聞こえていた。周りにはキャリアービームに当たった際にエネルギーを抜かれたのか、スクラップのように積み重なっているロボラルドの住人たちが転がっていた。
「アルカリ星人め!」
「僕達も売り飛ばされちゃうのかなあ・・・・?」
「ひっく、ひっく・・・・」
「?」
 子供の泣き声がする。発生源を探ると、ドラ太郎達だった。レジェンドラの勇者の子供だからなのか、他のロボットたちは人形のようになっている中、元気に泣き声をあげていた。
「おまえたちも捕まったのか」
「あ、おにいちゃんたち!」
「ぼくたち、もうおうちにかえれないの?」
 ドラ太郎達はタクヤ達の下に駆け寄って、「帰りたいよう・・・・」としがみついた。
「そ、そんなこと言ったって・・・・」
「俺達の力じゃ・・・・・」
「ぼくたち、父ちゃんのいうこと、ちゃんときくから。いいこにするから・・・・」
 しゃっくりあげるドラ太郎を、タクヤは突き飛ばした。
「甘ったれんな!!」
 その怒鳴り声にびっくりして、ドラ次郎、ドラ三郎もコテンとひっくり返った。
「タクヤ・・・・」
「タクヤ君・・・・」
「怒鳴ることは・・・・」
「うるせえ!」
 カズキに向かって怒鳴ると、ドラ太郎達を睨みつける。
「泣いてる場合じゃねえだろ!おまえらはレジェンドラの勇者、ドランの子供だろ!
 おまえ達は、勇者の子なんだ!」
「父ちゃんの・・・・」
「勇者の・・・・」
 そんなことを言われたのは初めてだった。けれどもなんと自分を奮い立たせる言葉だろう。ドラ三郎、ドラ次郎が立ち上がる。
「勇者の・・・子・・・・・」
 ドラ太郎は刀の柄に手をやった。生まれた時から父とおそろいの。
「「「ぼくたち父ちゃんの子・・・勇者の子なんだ!!」」」
 勇者の子供達は、剣を天に掲げた。


『うう・・・・』
 被弾の跡も痛々しい勇者達がうめき声をあげる。
「あと一発でお終いですな!」
 ジョーが上機嫌でアルカリ星人に言った。
”バテッイサナセカマ!”
 こちらも上機嫌で返事をするアルカリ星人。
『だめだ、私たちの力ではっ・・・・・!
 主達よ、息子達よっ・・・・!』
 ゴルドラン達の目の前で、宇宙船の一部が爆発した。

「いいぞ、じゃんじゃんぶっ壊せ!」
 人気のないコントロールルームでは、ドラ太郎達が小さな竜牙剣を抜いてコンピューターを片っ端から壊していた。
「ぼくたちは、勇者の子だ!」
「父ちゃんやみんなを・・・・」
「まもるんだーい!!」
 異変の嗅ぎつけたジョー達がやってきて、牢に放り込んでいたはずのお子達を発見した。
「ああーーー!て、ててめえら脱走しやがったな!」
 下品な怒鳴り声に、ドラ太郎達は振り返って声の主を睨みつけた。子供とは思えない気迫に、思わずジョーは圧倒される。しかもその子供たちの外見ときたら。
「こ、こいつら、オレに恥をかかせた大男のガキだな・・・・。ちょうどいい、ぶっ殺してやる!!」
「殺してやる!」
「してやる!」
 早撃ちで銃を抜くジョーと手下達。
「あぶなーい!」
 とっさにタクヤは叫んだ。だが、子供達はドランの子だった。銃の弾道を見切ってかわし、そのまま大きくジャンプする!
「「「ミニミニりゅうがけん!イナヅマぎりーーーーーー!!!」」」
 雷を纏った刀が、銃身を切る。導体でできているジョー達は、そのまま痺れた。
「しびびん、しびびん、しびびんビーン!!」
「ふん」
 小さな勇者が刀を鞘に収めると、放電は収まった。

 いくつもの傷を体に負いながらも、勇者達は攻撃用デバイスを全て片付けた。先程の爆発で、宇宙船からの援護射撃がなくなったことが幸いした。あとは本体だけだ。
”レノオ、レノオ!”
 攻撃の決め手を窺っているスカイゴルドラン達の反対方向から、巨大な鮫が飛来し、宇宙船の装甲をぶち破って中に進入した。
 お子達は途方に暮れていた。脱出しようにも出口がわからない。一緒に捕まっているロボラルドの人達を見捨てるわけにもいかない。考えあぐねているところへ、いきなり壁が爆発した。
「?!」
 煙が収まって見上げると、
「ああ、さ、サメ〜〜〜〜?」
 以前にタクヤが宇宙空間でみかけた鮫だった。
「なんで、こんなところに・・・・・?」
 鮫は何も言わずに、乱杭歯の見える口をパクパクさせた。
 
 再び宇宙船の一角が爆発する。煙の中から出てきたのは鮫だった。それも勇者達のいるこちらの方にやってくる。
『見ろ、鮫だ』
 鮫は着陸すると口を開いた。思わず身構えた勇者達だが、口の中から出てきたのは
「おーい、安心しろい!」
 ドラ太郎達を抱えた主達と、捕らえられたロボラルドの住人達だった。
「オイラ達も子供達も無事だぞーい!」
『主!息子達!良かった、本当に・・・・・・!』
 機械にあらざれば、涙が出ていたかもしれない。救出した人たちを全ておろすと、鮫は黙って去っていった。
「でも、あの鮫野郎、どうしてオイラたちを・・・・」
 考えていてもラチがあかない。今は目の前の敵を倒すことが先決だ。
「よーし、グレートゴルドランに合体だ!!」
 お子達が合体命令を出す。
『黄金獣合体 グレートゴルドラン!』
 子供達の目の前で、グレートゴルドランに合体する。
『グレートアーチェリー!!』
 金色の光が集まり、巨大な弓になる。金の弦に4枚羽の黄金の矢が番えられた。
『ゴールデンアロー・ファイナルシュート!!』
”ヨ〜〜〜ロテエボオ〜〜〜〜!”
 派手な爆発から逃れたはずのアルカリ星人の脱出ポッドは、
”ア〜〜〜〜〜〜?!”
 逃げていく最中に爆発した。大丈夫だろうか?



 アドベンジャーは再び光のレールを走っている。
「なんで?なんでだよ?!おまえの子だろ?!どうして連れていかないんだよ!」
 いきり立つ主の言葉を、ドランは黙って受け止めていた。
「いいのかよ?!もう会えないかもしれないぞ!」

 主の言うことは尤もだった。自分もそうしたいと、子供たちに言ったのだ。その答えが予想と違っていたのだ。夕暮れに光のレールが現れた時、ドランは家の前で家族を説得していた。 
『どうして、どうしてこの地に残るというのだ?一緒に行くのだ、私とレジェンドラへ!
 私達は、親子ではないか!ならば・・・・!』
「宇宙人、またくる!」
「きっと、またくる!」
「まもらなきゃ!」
 父を見上げていたのは、三対の、小さいながらも勇者の瞳だった。
『お、おまえたち・・・・』
「もう、決めたの」
 いつも母のスカートの影にいた幼女でさえも、父の前に自分の足で立っていた。妻はそんな子供達を優しく見つめ、夫に向かって静かに口を開いた。
「私たちはここに残ります。あなた、安心して。この子達を、あなたに負けない立派な勇者に育ててみせます。
 旅のご無事を、お祈りしています」
 マリアのこぼした涙を、忘れない。彼女とて別れが辛いのだと、初めて知った。いつも怒鳴ってばかりだったのに。
「父ちゃーーん!」
 聞き分けのなかった甘えん坊が泣いている。自分との別れに。

「しっかし子持ちの勇者ってのもなー!」
 タクヤがソファに勢いをつけて座る。
「タクヤ君!そんな言い方・・・・」
 ダイは目の前にいるドランを気遣ってタクヤを叱った。
『いや、私は嬉しい。
 宇宙に誇れる素晴らしい子供たちの父親であることが・・・・・!』
 これから何度かパワーストーンに戻るだろう。主と別れる時も来るだろう。
 それでもきっと。
 家族のことは忘れない。




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