今日も今日とて宇宙を行くアドベンジャー。 だが、平時と違って今日は朝(?)からとても静かだった。 「・・・・ハラ減った〜・・・・・」 ソファでは空腹のあまり動けないお子達が、ぐったりとしている。 元気のない主達に、ドランは心配そうに声をかけた。 『大丈夫か? 主よ』 「大丈夫じゃねぇよ・・・・」 「前の星で、もっとたくさん食料積み込んでおけばよかったね・・・・」 「後悔先に立たずってヤツ・・・・」 そのままずるずると、カズキがずり落ちる。ソファに腰掛けているのだって、エネルギーを使う。 一番消費の少ない寝ている時だって、お腹は容赦なく減っていくのだ。 『頑張れ! 主よ!』 「おーー! ・・・・と言いたいとこだけど、こればっかりはどうしようもねぇよ・・・・。オイラ腹が減って、屁をひる力もねぇやぃ・・・・」 アドベンジャーを見守る形でついてくるキャプテンシャークの展望室で、悪太・・・・もとい、イーター・イーザックは物思いに耽っていた。深遠な宇宙は、考え事をするのに丁度良い。星は柔らかくも冷たくも輝き、受け入れも拒否もしないから。 「イーター・イーザック様」 突如背後から話し掛けられ、イーターは飛び上がった。 「シャラ・・・・! ンラさん・・・・」 絶叫をあげて逃げたいのを辛うじて踏みとどまる。ここで逃げたら、自分がワルターであるとバレてしまう。シャランラはイーターの隣にくると、彼を見ずに、ただ隣に並んで同じ宇宙を見た。 「・・・・船長様は誰かを待っていらっしゃいますの?」 「え? 何故、そのようなことを?」 「わたしにはわかりますわよ。だって、わたしも愛する人を待っていますから・・・・」 ガラスに映ったシャランラの表情は、僅かに明るくなったような気がした。 「ワルターとか言う、気さくで男前な好青年のことだな?」 自分で言ってりゃ世話はない。だが、シャランラの目には真実そう映っているので、まるで疑問を差し込まず、こっくりと頷いてみせた。 「はい。何処となく船長様に似ていますの」 そういって静かな微笑をイーターに向ける。ワルターはあわやバレたか!? と背筋が一瞬寒くなった。 「え!? そ、そうなのか?」 「ええ、そうですの・・・・」 そのままシャランラはイーターに寄りかかった。 「いっ!?」 もう、本当にバレたかも知れない。緊張するイーターに、シャランラは素直に謝った。 「ごめんなさい、船長様って、本当にとってもワルター様に似ていますから・・・・ちょっとだけでいいんです・・・・」 シャランラの普段から見れば、信じられないほど慎ましやかな甘えだ。バレていない安堵と、こんなに殊勝で可愛らしい姿もあったのかと、驚きと微笑ましさがこみ上げて、腕の力を抜いた。寄り添い易くなった腕に、そのさり気ない優しさを敏感に感じ取ったシャランラは、年齢よりも大きめの胸に、淡い痛みを覚えていた。 (ああ、ワルター様という男性がありながら、わたしったら、なんて罪なオンナなの・・・・) 静かに、一緒に宇宙を眺める時間が楽しい。シャランラの体温を左腕で感じながら、ワルターはその心地良さに胸の内を引き締めた。 (お子達と勇者達は、私に安らぎをもたらしてくれた。シリアスよ、おまえも・・・・!) そんな二人を、そっと影からカーネルは眺めていた。 「ワルター様はあれでなかなかシャイなお方。しばらくは、宇宙海賊イーター・イーザックにさせておいた方が宜しいようですな」 シリアスは常と同様、レイザーを伴って広大なシュバンシュタインの廊下を歩いていた。シュバンシュタインは皇族の乗艦に相応しい豪華さと同時に、ギアの製造工場も内包している。それゆえ、一つ一つのスペースが非常に広く、移動だけでもかなりの運動になった。宇宙に出てからシリアスの健康が損なわれることなく、またレイザーのストレスが溜まる兆候がないのは、この広さのおかげだった。だが、現在その目は愛犬に眼差しを送ることもなく、虚空を睨みつけている。 (兄上が生きていた・・・・それも、私が未だ果たせない、勇者の主として・・・・) キャプテンシャークのオーラ振動数は、確かにパワーストーン特有の数値を示していた。他部署に秘密裏に造らせたものでないことは確かだ。 (ありえない・・・あってはならないことだ。この私が、あんな愚かな兄上に敗北することなんて・・・・!) 暗い焔がじりじりと湧き上がりかける。その機敏を感じ取ったレイザーは、寸ででシリアスに擦り寄った。甘えてくる柔らかい毛並みに、シリアスはふっと自分が目当ての場所を通り過ぎかけているのに気付く。 「レイザー、おまえはここで待っていなさい」 少しだけ笑って頭を撫でると、レイザーは大人しくその場に座り込む。しばらくレイザーの頭を撫でたシリアスは、何時もの鉄面皮を被って自動ドアに足を向けた。中はシュバンシュタインの戦術指令室だ。シリアスただ一人の為に作られたその司令室は、複数のスクリーンが各方面の状況や必要データの詳細リストなどを同時に表示して、さながら聖堂のようなイメージを沸かせる。ここは作戦時のエクセルギア等への最優先指令や、細かいところでは親衛隊の部隊編成なども、ここからデータを転送させるのだ。 「今一度、作戦を立て直さなければ」 暗い部屋にスクリーンのバックライトが溢れ出し、シリアスの肌をさまざまな色で映し出した。 ようやくアドベンジャーのスクリーンに、次の目標となる惑星が表示される。 『主よ、いよいよ次の惑星に到着だ。今度の惑星はオーサ2。スイート系第二の惑星で・・・・』 「んなことどーでもいい! 早くしないと死んじゃうよ」 「「同感・・・・」」 お腹を抱えて急かすタクヤに、同じ姿勢のカズキとダイが力無く同意する。「死んじゃう」の一言に、ドランは大げさに慌てた。 『このままでは主が! アドベンジャー、急ぐのだ!』 『了解!』 苦笑の混じった声で、アドベンジャーは何時もより、ほんのちょっぴり速度をあげた。 オーサ2はかなり綺麗な惑星だった。地球で言うならカナダの土地に似ている。森の側の原っぱに着陸すると、長旅に飽いた勇者達はそろって外に出てロボット形態をとった。が、主達が出てこない。 『?』 『主はどうしたのだ?』 何やらアドベンジャーの中でもごもごとした言葉が幾つか聞こえる。やがて何時もは先を争って外に飛び出すお子達が、へろへろと力無くまろび出た。 『主よ、命令を』 人気のない場所を選んで着陸したが、もう少し行けば村がある。お腹が減っているなら、そこまで連れて行けば主達はごはんにあるつける。連れて行くことの是非をドランなりに考慮して問うたが、主の返事は違った。 「食いもん持ってきて〜・・・・」 『ズコーーー!』 八人は盛大にひっくり返った。 が、すぐに立ち直る。この突拍子もない主との付き合いも大分長くなってきた。 『主の命令だ。皆、食べ物を探してこよう』 レオンは三人の前に跪いた。 『主達よ、それまでゆるりと待っておるが良い』 「何でもいいから、急いで頼むぜ・・・・」 『心得た』 へたって動けないカズキの言葉に、レオンは立ち上がって頼もしく微笑む。だが、お子達からしてみたら、そろいもそろって天然ボケの混じっているこの部下達は、こういう時にはあんまり安心できなかった。 『やっと到着したと思ったのに、いきなり働かされるだなんて、ついてないな〜』 ぼやくファイヤーシルバーを、ジェットシルバーが窘める。 『主達にとって食べ物は重要なエネルギー源なのだ。おろそかにすることはできない。 さ、急ごう』 歩き出した仲間達を、一人腕を組んで立ってる空影が止めた。 『その必要はないでござる』 協調性のない空影に、疑問の眼差しが向けられた。 『空影、どういうことだ?』 『よもや、主の命令を聞けぬと申すのか』 非難めいたレオンの言葉には耳を貸さず、代わりに地面に耳をつけた。 『?』 不思議な行動に、思わずドラン達は上から覗き込んでしまう。無風の沈黙の中、不意に空影が顔をあげた。 『来た。あれを!』 身を起こして空影が指差した先には、五人の人影が見えた。見通しの草原から、明らかにこちらを目指して来ている。 『あれは、この星に住む人々か?』 ダイがのろのろとポケットからゴルドスコープを取り出した。 「何か持ってるよ」 一旦目から放し、倍率を変えて再度レンズを覗く。 「食べ物みたいだ!」 「「何―――っ!? 本当か!?」」 倒れこんでいたタクヤとカズキがダイに飛びつき、ゴルドスコープを引っ手繰った。確かに、地球のサツマイモに似た食べ物が、籠に盛られている。 「わぁ〜、ホントだ!」 「「「いっただーきまーす!!!」」」 ガツガツと芋を貪る音がする。 「ほっほっほ・・・・たーんと食べなされ」 やってきた中でも一番年かさの老人が、穏やかに笑う。聞けば、彼等はここから最も近い村の住人らしい。オーサ2の住民達は勇者達を不思議にも、脅威にも思わず、腹の減った主達に食べ物を差し出してくれた。まるで、お子達に食料がないことを知っていたかのように。特産のお芋は外見と味はサツマイモに似ているが、生のままでも食べられて、シャキシャキと新ジャガのように瑞々しく、芋よりも林檎のようだった。 「これで、ご先祖様に顔向けができますじゃ」 『と、いいますと?』 「ワシらのご先祖様がの、そなた達のようなレジェンドラを目指した勇者の一行に食べ物を差し出したそうじゃ」 『!』 『我々と同じく』 『レジェンドラを目指した勇者が・・・・』 黄金三人組は顔を見合わせた。シルバーナイツも同様だ。 「それ以来、我が家には次に勇者がやって来た時にも食べ物をお出しするようにと、代々語り継がれてきたのじゃ」 レジェンドラの勇者とその主に出会った者には、幸福が訪れるという。そんな御伽噺めいた言い伝えと共に。けれども、それが夢や妄想ではない証拠に、村長の家には当時にはないはずの写真まであった。だから、アドベンジャーや光のレールが一目でわかったのである。 一方、毎回記憶喪失で復活する勇者達は、思わぬ話に驚きを隠せなかった。 『我々以外にも、レジェンドラの勇者がいるというのか?』 『ふーむ・・・・』 『主よ、聞いたでありますか?』 ドリルシルバーが、がっつくお子達の前に膝をつくが 「あんぐ、むぐ・・・・ん〜? 何がー?」 例によって例のごとく呑気なので、頭を抱える。 『聞いちゃいねーな・・・・』 こういう時に張り合いのない主の性格は、知っているはずなのに、やっぱり落胆してしまう。 そろそろ腹五分ぐらいになっても良さそうな時だった。 「ん? うひょ!?」 突如タクヤがヘンな声を出し、直立不動に立ち上がる。 「どうしたの? タクヤ君? ん! うぞっ!?」 タクヤを見上げたダイも、いきなりおかしな声を出した。 「あんだよ、二人とも・・・んがっ!?」 続いてカズキも。挙動不審なお子達に、ドランは心配になった。 『どうしたのだ? 主達よ?』 ドランの声に、長老はふっとあることを思い出す。 「お? そうじゃ、言い忘れておった。そのウルトラポテトはの」 「「「ウルトラポテト〜!?」」」 「なんか、ヤなネーミングだな・・・」 「う、うん・・・・」 「いるんだよなー。すーぐ名前に『スーパー』とか『グレート』とかつけちゃう奴・・・・」 何かを耐えるかのような青い顔をして、お子達はそれでもツッコミを入れた。目の前に『グレートゴルドラン』になる連中がいるのに言いたい放題だ。 「で、そのウルトラポテトはの。消化吸収の極めて良い繊維質じゃからして、急激に摂取すると・・・・」 飛んだ。 「「「ぎええええええええ〜〜〜〜〜〜!?!?!??」」」 『あ、主!!』 『チェーンジ!』 焦って腕を伸ばすドランの隣から、咄嗟にレオンは飛び出した。 『助太刀いたす!』 『私も!』 続いて空影、ジェットシルバーも。ドランは長老を振り返った。 『ご老人、これは一体!?』 「屁じゃ」 「は?」 「『は』じゃなくて『へ』。つまり、オナラじゃ。あのウルトラポテトを食べると、ものごっついオナラをこいてしまうのじゃ」 と呵呵大笑する。 そしてオナラで空を飛んでいる主を追いかける三人だが、主の姿は小さくなるばかりだ。 『だめだ、追いつけない!』 『このままでは!』 『大気圏を脱出してしまうでござる!』 ちなみにレオンはマッハ9、空影マッハ5.2、ジェットシルバーはマッハ5.5である。 『主よーーーー!』 叫ぶドランに、オープンチャンネルの通信が聞こえたのんびりと長老が声をかける。まるで花火を見ながらお茶を啜っているかのようなのんびりとした調子で。 「その心配は無用じゃ」 『しかし!』 「ウルトラポテトは消化吸収が良いからの。オナラはすぐにおさまるのじゃ」 その言葉どおり、お子達はガス欠で停止した。 「止まった! オイラ達助かったんだ!」 「バカ! もっと悪い状態になったんだ!」 「第一話を思い出すよね、このシチュエーション・・・・」 人間が空中で静止できるのは、何秒までだろうか? ダイが心中で思ったよりも早く、重力からお呼びがかかる。 「ひえぇ〜〜〜〜〜〜!?!?」 『主!』 「うわーーーーーー!!!」 絶叫をあげるタクヤ達に、レオン達は猛スピードで追いつくと、変形してそれぞれの掌でキャッチした。 『主よ、怪我はないか?』 咄嗟にタクヤを受け止めたレオンが軽くセンサーでチェックしても、とりあえず外傷は見当たらない。同じくカズキをキャッチした空影、ダイを守ったジェットシルバーもセンサーを走らせる。 「は・・・はは・・・ははは・・・・あははははは・・・!!」 突然、タクヤが笑いだした。つられてカズキとダイも。恐怖で頭がおかしくなったのかもしれないと心配する勇者達の掌で、主達は盛大にのたまった。 「おもしれーーー!!」 「最高だったな!」 「僕も、ハラハラしたけど、面白かった!」 ジェットコースターでもここまでのスリルは味わえまい。仕える者達は、「面白い」と言い切る主達を見て、ありえない頭痛がしてきた。 「もっとやってみようぜ!」 かくして、半分諦めの境地の勇者の足元で、お子達は貰ったポテトを口につっこんでいた。 一人二本を食べ終わると、空のリュックを背負って立ち上がる。 「それじゃ、皆。行ってくるぜい!」 『何かあったら、すぐに連絡するのだぞ』 例によって心配したドランが声をかける。 「わーってるって! お」 お腹が微かに膨れるような感覚が。 「キタ! きたきたきたきた・・・・!」 そのまま下腹に力を入れて、ぶっと勢い良く吹き出す。ロケットの原理で、お子達は浮かび上がった。 「行ってきまーす!」 あっという間にその小さな体が見えなくなってしまう。 『あ〜あ、いっちゃった・・・・』 ファイヤーシルバーは額に手をかざし、眺めやる。 『長老の話だと、ウルトラポテトの自生している谷は、ちょうどこことは反対側にあるそうだ』 『その通り。主達は、この惑星を半周することになるのだ』 惑星半周など、自分達に言えば幾らでも移動できるのに。危険なケモノなどいなければ良いが。 勇者達の不安や不満とは裏腹に、主達は滅多に体験できない自力飛行に浸っていた。 「あーっはっはっは・・・・! 愉快、ユカイ! 奈良の大仏、屁で飛ばせ〜なんつって」 「これなら惑星を半周するのもあっという間だな」 「それに無公害だし。自然に優しい移動手段だよね」 そう、ウルトラポテトのオナラは何故か臭くない。その為、飛行を持続させるためにポテトを常に食べ続けていなければいけないのも、欠点としては思いつかなかった。 「さあ、ウルトラポテトの谷までもう一分張りだ!」 と、笑うお腹に力をこめた。 暗い部屋に響くタイピングの音が緩やかになる。画面に疲れた目を少し細める。 「全勇者の解析終了・・・・キャプテンシャークだけはデータ不足ですが・・・・仕方ありません、仮のデータを入力しておきましょう」 再びキーボードの上を、白い指が目まぐるしく走る。 「これで全てのデータの入力を完了。戦闘マシンバザルトへ転送!」 ギアハンガーでは、命を吹き込まれたバザルトが、不気味な起動音をあげた。 「うっひょー! あるある、ウルトラポテト!」 件の谷へついたタクヤは、早速足元の草を引っ張った。教えられた草が谷を覆い尽くしている。宝庫なのは間違いない。やはりサツマイモに似た葉っぱは、茎を次々と地上に晒し、たわわな実を差し出した。 「カズキ、ダイ! しっかり集めろよ!」 「わかってるって!」 「腹ペコはカンベンだもんな!」 土を払ってリュックに詰め込む。この星での滞在時間がもう少しあれば、干物にして保存食にできるのだが。 『!』 突如空影が顔をあげた。 『どうした、空影?』 『あれを!』 空影が指差す方向には、赤い、何処かタコを連想させるような機械が浮遊してきていた。ボディのあちこちに除く目が、金属故の冷たい、しかし明確な殺気を発している。あれは断じて先日のムゴーレ等の、この惑星のものではない。 『あれは、シリアスの戦闘マシン!』 「勇者達よ、今度こそ倒します!」 バザルトのビームが戦闘の開始だった。 一斉に飛び退り、ドランが号令する。 『皆、合体だ!』 『心得た!』 ゴルゴンの出現と同時に空影が変形し、スカイゴルドランへ、そしてレオンやシルバーナイツもそれぞれ合体を果たす。 「バザルト! 対勇者プログラム作動!」 バザルトのマシンアイが煌き、不気味な速度で勇者達のデータを洗い流していく。 一番手を仕掛けたのはゴッドシルバリオンだった。 『私に任せろ! ゴーーーーーッドフィニッシュ!!』 ゴッドシルバリオンの持つトライランサーが炎に包まれる。バザルトは瞬時に自分の足の一つをゴッドシルバリオン用のものへとシフトさせ、炎をも凍らせる冷気を吹き付けた。 『何っ!?』 切っ先から凍る戦慄の隙を突き、バザルトはビームフットを前面に押し出すと、ゴッドシルバリオンを地面に叩きつけた。バザルトはそれぞれの勇者の攻撃に対し、最大の効果をあげるよう、それぞれ属性の違う足を取り付けてある。各攻撃パターンに対し、フレキシブルに対応できるよう、プログラムされて。 『ゴッドシルバリオン!』 足元にゴッドシルバリオンを落とされたレオンカイザーが大成敗を放つが、スクリュー状に収束したビームが、細いビームカッターごとレオンカイザーを貫いた。 『うわあああああ!!』 『レオンカイザー!』 今度はアドベンジャーが必殺のギャラクティカバスターを放つ。巨大な光弾を、無数のビームマシンガンが矢襖のように貫き、かき消した。 『ぬおおおおおおお!!』 『超電磁ストーム!』 スカイゴルドランの攻撃は一連として繋がっている。彼は超電磁ストームのホールドを確認しないまま、疾風迅雷斬りへと移行するのだ。バザルトはスカイゴルドランへ向けてフットウエポンをシフトすると、逆回転のストームを発生させて過剰放電による拘束を相殺し、刀を大上段に振りかぶって隙のできた胴へと、頭部に伏せていたビーム砲で迎撃した。 『のわっ!?』 仲間と同じく大地に叩きつけられる。 『くそ!』 『我々の必殺技が、全てインプットされている!』 『このままでは・・・・!』 『勝てないのか・・・・?』 バラバラじゃなくて一斉に攻撃しろとか、そういう指示をくれる主達はいない。 計算どおりに事を運んでいくシリアスは、バザルト越しに冷笑した。フットウエポンが一斉に攻撃を仕掛ける。 『うわーーーーー!!』 『あ、主よーーーー!!』 『主!』 芋掘りに専念していたお子達は、途切れ途切れのドランの声を拾った。 「? どうした、ドラン!?」 『敵と交戦中だ!』 「何!?」 『主達がいなければ、グレートゴルドランに合体できない!』 「わかった! すぐに戻る!」 『拙者、迎えに参る!』 空影がゴルドランの背中から離脱し、飛び上がる。 「ふっ、逃がしませんよ!」 バザルトのウエポンがまたシフトし、今度は数個の弾を吐き出した。 『何の!』 それを軽くかわすが、飛んでいった先で弾けた弾は、まるで蜘蛛の巣のように広がり、空影を捉えた。 『うわああーーーーー!!』 「空影!」 ゴルドシーバー越しに聞こえる悲鳴に、タクヤは戦況がわからず、叫んだ。 「くっそう、これじゃ迎えは期待できそうにねえか!」 「でも、僕達が戻らなきゃ、皆やられちゃうよ!」 「にゃろうっ・・・・!」 いきなり駆け出したタクヤを咄嗟にカズキが腰を掴んで引き止める。 「バカ! 走っていく気か! ここは惑星の裏側なんだ。例え宗兄弟だって走っちゃ行かれねえよ」 「んじゃ、どうすりゃいいんだよ!」 焦れたタクヤが詰め寄る。 「来たように戻るのが、一番速いな」 「来たようにって・・・・」 三人の視線が、収穫途中のリュックに注がれた。 ポテトの谷から三機のロケットが飛び出す。 「待ってろよ、皆!」 「必ず帰るからな!」 「でも、ちょっと格好悪い・・・・」 オナラで飛んでいるのだから仕方がない。しかも消化吸収が良すぎる為、すぐにガス欠になってしまう。 「うわ!?」 「ウルトラポテトをもっと食べるんだ!」 水も無しに喉に詰まらせ、何とか墜落寸前に飲み込むと、すぐに生体ロケットは復活した。 「皆の命がかかってるんだ! 気合を込めていくぜ!」 「おう!」 リュックの中身をまるで刀のように取り出して間断なく齧りつき、顎を痛め始めたお子達の目にようやくバザルトの集中砲火を浴びる勇者達の姿が見えてきた。 「見えてきたよ!」 「もう少しだ!」 「ようっし! 愛と正義を守るため、下っ腹にぐっと力をこめて!」 「「「せーの!!!」」」 安産。 綺麗な小川が近くにあったのは、本当に不幸中の幸いだった。未だ戦闘の銃撃、爆音の聞こえるなか、洗ったズボンと下着が柔らかい風に吹かれている。 「六年生なのに・・・・」 「来年は中学なのに・・・・」 「主人公なのに・・・・」 タクヤは時折聞こえる悲鳴を聞きながら、あえて自分の声は流さずゴルドシーバーに話し掛けた。 「ごめんよ皆・・・・こんなオイラ達を許してくれ、笑ってくれ、軽蔑してくれ」 ゴオオン・・・・と低音のエンジン音が間近でする。 「ん? ほえ?」 見上げれば、金属の鮫がその巨体を前方に見える光の集大成に向けて泳いでいた。 「キャプテンシャーク!」 立ち上がったタクヤの体から、下着代わりの葉っぱが落ちた。 『助太刀するぜ!』 キャプテンシャークは各部のビーム砲をバザルトに向かって放ち、ゴルドラン達への砲撃を止めさせる。 『キャプテンシャーク!』 停止したバザルト越しにその姿を見て、シリアスはほくそえんだ。 「やはり来ましたね、兄上」 『チェーンジ!』 戦場に駆けつけたキャプテンシャークは即座に変形してロボット形態になる。 「宇宙の歌はオレの歌・・・・ 宇宙海賊イーター・イーザック 只今参上!」 余計な一言を携えて、キャプテンシャークがバザルトに対峙する。 「悪の少年シリアスよ。今日こそこの私の言葉を受け入れて、正しき心を取り戻すのだ!」 シリアスはイーターの言葉を鼻で笑うと、バザルトに攻撃命令を下した。タコの触手のような数本の足先からビームを放ち、キャプテンシャークに肉薄する。だが、キャプテンシャークは、それを余裕でもってかわし、 『キャプテンキーック!!』 バザルトを大地に叩きつけた。 「速い!?」 キャプンテシャークは、間髪いれずに地面へ降りると、地上用のバトルタンクへと変形し、バザルトを轢いた。叩き出された数値にシリアスは驚愕する。 「なんだと!? スピード、パワー、共に、予想を遥かに上回っているっ・・・・!」 ボディサイズから、アドベンジャーのパワーと、他の合体した3体のスピードの平均値をパラメータとして入力したはずなのに。 「バザルト、フルアタックモードにシフトチェンジ!」 苛立ったシリアスの声に、バザルトは先程ゴルドラン達を蹂躙していたストーム、カッター、マシンガンが、全てキャプテンシャークに向けて発射された。 『うおおおおおおお!!』 「うわああーーーーー!!」 光量と衝撃に、ワルターは操舵輪にしがみ付いた。そのままキャプテンシャークは数十秒、バザルトの攻撃を感受する。ふっと、イーターの体にかかる負担がなくなった。 『ふっ・・・・まあ、こんなモンか』 「? どうしたのだ、キャプテン」 薄く笑みを浮かべるキャプテンシャークに、イーターは不思議そうに訪ねた。スクリーンには相変わらず勇者の装甲で爆発する光が映っているというのに。 『あいつの総攻撃力がこんなモンだってことさ』 「何ともないのか?」 『あったりまえだ! 海の勇者は、こんなヤワな攻撃じゃビクともしねぇのさ!』 軽口と共に、小さなスクリーンに食堂でのんびり昼食をとっているシャランラとカーネルが映し出される。デキャンダの水には小波一つ起こっておらず、シャランラが可愛らしい欠伸を漏らして。 キャプテンシャークは左手首から大振りのカトラスを取り出して右手に持つと、バザルトに向かって走り出した。 『キャプテンソード!』 流れ来るミサイルを叩き落し、一足飛びに距離を詰めると、短距離の攻撃に対処できないバザルトの装甲を、まるで紙のように易々と切り裂いていく。 『おりゃあーー!!』 「バカな!」 スーパー竜牙剣の強度にまで対抗できるはずのバザルトのボディが、瞬く間に無残な姿になっていくのを、シリアスは見せ付けられた。 「そ、そんな・・・・あのキャプテンシャークが、これほどの力を持っていようとは・・・・」 『オラオラオラオラオラオラ・・・!!』 バザルトはボディを微塵切りにされ、慌てて逃走にはいる。頭部だけになったバザルトに、キャプテンは剣を納めた。 『おまえにはこれでトドメだ!』 右肩に搭載されたランチャーの排熱ファンが勢い良く回転する。 『十六連装スパイラルランチャー!!』 次々と弾倉にランチャーを放り込み、二回転分の弾をぶちこむ。立ち上がったゴルドラン達の目の前で、バザルトは哀れな花火をあげた。 『す、凄い・・・・!』 『見たか! これがオレ様の力! 海の勇者の心意気ってモンだ!! ワーッハッハッハッハッハ・・・!!』 少々オヤジ臭い高笑いをするキャプテンシャークの中で、イーターはぽかんと開いていた目を喜色に輝かせた。 「知らんかった〜〜! キャプテンってこーんなに強かったんだ!!」 夕焼けの中に光のレールが走る。ようやくズボンの乾いたお子達は、なんとか歩いて戦場跡へと戻ってきた。ゴルドラン達がキャプテンシャークの前に並び、彼らのお陰で助かったのだから主達も礼をと、促した。 「お子達よ、おまえたちの冒険はこのイーザック船長が見守っている。これからも安心して旅を続けるが良いぞ」 頭上でキャプテンシャークがVサインなんか出している。 タクヤは内心舌を出しながら、如何にもヒーローに救われ、憧れ始める少年の表情を作ってイーターに籠に入ったウルトラポテトを差し出した。 「イーザック船長、これどーぞ」 「俺達の気持ちです」 「です!」 カズキとダイもそれに習う。イーターはその姿に感激したが、表向きはあくまで平静を装った。 「おお、そうか! ありがたく頂戴しておこう。 ご老人よ」 いきなり話を振られ、何時もワルターの背後に控えるようにしていた姿勢のカーネルは、一瞬わけがわからなかった。 「へっ!?」 だが、直ぐにイーターの代わりにお子達から籠を受け取る。ワルターもほとんど無意識にカーネルを呼んだのだろう。 「さらばだ、お子達よ!」 「ばいば〜い!」 やがて爽やかに格好良く飛び去っていくキャプテンシャークに向かって、お子達は手を振った。 「さよーならー!」 と、その姿が見えなくなるまで手を振る。無事に視界から遠ざかると、タクヤは舌打ちした。 「ちぇっ、なーにがイーザック船長だっての!」 「威張りやがって!」 そうかな? とダイだけは首をかしげた。ワルターのお芝居に付き合うのも中々面白かったからだ。それに、仕掛けもしておいたし。 『そうは言っても、今回ばかりは彼らに感謝しなければならないぞ』 『うむ、ゴルドランの言うとおりだ』 レオンカイザーも諭すように口を挟む。何時ものようにダイが二人を宥めた。 「タクヤ君もカズキ君も機嫌を直して。 さ、行こうよ!」 「そうだな」 「よっしゃ! 次の星に向かって、レッツラゴーだ!」 「「「おう!!!」」」 さてその頃、お子達の仕掛けが爆発したキャプテンシャーク内部では。 「どっしぇ〜〜〜〜!?」 カーネルとイーターが重力のあるはずのキャプテンシャーク内を飛び回っていた。 「な、なんなんじゃコレは〜〜〜!?」 「へ、屁でございます〜〜〜〜!!」 「んなこたわかっとる!」 調理を担当したシャランラはうっとりとオナラに振り回されているイーターを見上げた。 「まあ、船長様ったらお空も飛べるだなんて。ス・テ・キ・・・・」 不意に言った言葉に自覚して頬を染める。 「あら、わたしったら。やっぱり罪なオンナ・・・・」 騒々しい主達に向けて、キャプテンシャークはとうとう不機嫌な声をあげた。 『おら! オレ様の中で暴れるんじゃねえ!』 「そんなこと言われても!」 「どうにも止まらないでございます〜〜〜!!」 「キビシーーーー!!」 |
||||
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||