ワルザック共和帝国には、建国の折より皇帝にだけ伝えられてきた口伝があった。前皇帝の退位と同時に新皇帝の即位が行われ、そこで初めて王冠と共に新帝の耳元に囁かれる。 『心飢えた時 レジェンドラを求めよ』と。 現皇帝トレジャー・ワルザックは飢えていた。己が支配する領域に。故に口伝に従い、ひっそりと忘れられた神殿を捜させた。天井も壁も朽ち果てた石造りの神殿には、初代の施したとされる封じの文字の描かれた床があった。それを持ち上げると、中の空洞は仕切りに区切られ、二つのモノが封印されていた。それは古代文字の書かれた十歳の子供ほどの大きさの石版と、ストーンサークルに封印された・・・・。 吹き荒ぶ風は帝国領土の荒地に雷雲を呼んだ。黄金の鱗持つ二十メートルほどの巨大な獣が咆哮を上げる。外見は二足歩行の恐竜に似ているが、上げる声は神獣と称しても不足はなく、周りを飛び交う人間の被造物を矮小に見せた。彼は恋人を捜すように、親を捜すように、子を捜すように声をあげ、彷徨った。 ワルザック共和帝国所属の小型飛行艇サンダージャイロの中では、藍色のタキシードを着た初老の老人が指揮を取っていた。ワルザック家の執事、カーネル・サングロス(六十)である。 「捕獲作戦開始!」 「了解!」 黄金恐竜の体に幾つものワイヤーフックが打ち込まれる。 「電撃オン!」 間髪いれずに電流が流れる。黄金恐竜は一際高い声をあげた。 「よーし、そのまま捕まえるのだ!」 だが、黄金恐竜は電撃の流れるワイヤーフックを煩わしく思っただけらしかった。無造作に体を動かしワイヤーを払いのける。サンダージャイロは互いにぶつかり合い、またあるものは地面や黄金恐竜の体に叩きつけられた。 「何?!」 近くにいたサンダージャイロが握りつぶされ、振るった尾に打ちのめされる。カーネルは冷たい脂汗を流した。 「や、やはり皇帝陛下のご決断は早すぎたのです。まず石版の言葉に従い、パワーストーンを発見するのが先だったのです。このままでは、我らが野望は夢と消える・・・・!」 日本の石環町。町の南面は海岸線があり、潮風がたまに強いのを除けば比較的穏やかな気候の土地だ。名前の由来は、町の北側にある石環山の頂上に、町の全景を見下ろすようにキノコ型の巨大な岩があるから。住人たちはそのままキノコ岩と呼んでいる。ひねりも何も無い。だが、その形は自然の造詣にはとても見えないため、遺跡の一部とも言われている。最早年寄りしか知らない古い言い伝えでは、社を嫌う竜神様を奉っているとも言われ、山をぐるりと囲むように、キノコ岩を象った小さな塚が数箇所、町の中に作られていた。 石環山の反対側に、こちらは少し緩やかな丘がある。丘のてっぺんには、三人の少年が何やら弾丸を思わせるような形のものをいじっていた。先頭に突撃魚のような顔を描いたそれは、ボブスレーだ。 「イヒヒヒヒヒ・・・・いよいよスーパーグレートビッグエクストラ号の試運転だよ〜ん!」 早くも先頭に座っている少年は原島拓矢。石環小学校六年三組在籍中。 「準備はいいか? ダイ」 「う、うん・・・・」 本当はこんなことしちゃいけないんじゃないかなあ?という表情で、須賀沼大はうなずいた。 「そっちはどうだ? カズキ」 「さっさと出せよ」 ダイと反対側でボブスレーを支えている時村和樹は、あまり興味のない表情でタクヤを促す。三人は幼馴染の十二歳。今年も同じクラスだった。 「でわでわ! スーパーグレートビッグエクストラ号、発進〜〜〜〜〜!!」 カズキとダイは見事なコンビネーションでボブスレーを押すと、急いで座席に飛び乗った。 「やっほうーーーーー!!!」 ノリ気でなかった二人も、風を切る爽快感に歓声をあげる。 「ほーら、学校はすぐそこ! これでオイラは今日から無遅刻無欠席少年になっちゃうよ〜ん!」 タクヤは得意げにハンドルから手を離した。ボブスレーを引っ張り上げる為に平常時より早起きしたことは忘れている。 軽快に草の上を滑っていたボブスレーが小さな石につまずいた。途端にボブスレーは傾き、猛スピードで回転する。最高速度のコーヒーカップでもこんなスピンはしない。 「うわーーあーーあーーー?!」 丘の中腹の雑木林でも勢いは止まらず、真っ直ぐ正面を向いてしまったボブスレーは、そのまま斜面に沿って建っている住宅街に突っ込んだ。 「うそーーーーっ?!」 同じことを言いたいのは壁をぶち抜かれた住人たちだ。密集した一戸建て住宅数件を全く勢いを殺さずに貫通し、斜面に沿って作られた道路に出る。正面衝突したガードレールが進路を変え、小学校の近くで作業していた、地元建設会社の日之出工業の作業中の道路の上を滑走する。 「が、学校だ!」 「タクヤ、前!」 「え?」 ブルドーザーが止まっていた。 「神様ーーーーー!!!」 信じたこともない神に向かって絶叫すると、間違えて悪魔が願いを聞き届けたのか、ボブスレーはブルドーザーのショベル部分に沿い、空に向かって進路を変えた。浮遊感に思わずタクヤは目を開ける。 「あれ? 飛んでる。オイラたち死んだの?」 「バカ言ってんじゃねーよ」 カズキは頬杖をついて呆れた。 「でも、もうすぐかも・・・・」 ダイは両手を胸に前に組んで祈りを捧げている。 「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜?!」 落ちた先はちょうど小学校の鶏小屋の中だった。鶏は全羽、無事だった。 「まったく君たちは・・・・」 職員室では今日何人目になるかわからないお説教が続いていた。相手は担任の美川ミチル先生。これで最後にしようとタクヤは腹を決めた。ここで自分たちにお説教している暇があったら、教室で大人しく先生の帰りを待っている良い子ちゃんに授業してやれよと思う。 「ごめんちゃーい」 「右に同じ」 「ほんとに、ごめんなさい・・・・」 真面目に反省をしているダイはともかく、タクヤとカズキの態度にミチルは嘆息する。 「はあ・・・・。 先生はね、どんな子にも素晴らしい才能があると思うのね。ダイ君、君は体力なら誰にも負けないでしょ。その才能をもっと別な方向に活かすべきじゃないかしら?」 「は、はい・・・・」 「カズキ君も、本当は抜群に頭良いんだから、真面目に勉強してみたらどう?」 「一応、考えときます」 小学校の勉強なんて真面目にやるのがつまらないのだから仕方ない。それでも表向きは相槌をうつ。 「タクヤ君は・・・・」 「はいはい!」 どんな良いところがあるのか期待を見せるタクヤに、ミチルは思わず考え込んだ。 「えっと・・・・タクヤ君は・・・・・・良いトコないわね」 「あらら?」 おどけてすっ転ぶタクヤだが、すぐにその笑顔が曇った。 「酷いや先生・・・・ボクに良いところがないなんて・・・・」 俯いて必死に目元を抑えるタクヤに、新米教師のミチルは焦った。 「言い訳なんか聞きたくないやい!」 「ああっ、タクヤ君!」 そのまま職員室の扉を開けるタクヤに、ミチルは追いすがることもできなかった。 「どうせボクはダメなんだ!!」 廊下の向こうでタクヤの叫び声が聞こえた。 「先生、ここは俺たちに。行くぞ、ダイ!」 「あ、ああ・・・・」 カズキがダイを促してタクヤを追う。ミチルは自分の言葉が生徒を酷く傷つけたことに気がついた。 「あ・・・・どうしましょう?! やっぱりあたしって、教師に向いてないのかしら・・・・?」 自責の念にかられて職員室で硬直しているミチルとは対照的に、タクヤ達三人は廊下で高笑いをしていた。 「ひゃーはっはっは・・・・成功、成功、大成功!相変わらずだよなー、ミチル先生って」 「ホント、ちょろいぜ」 「でも、ちょっぴり先生が可哀想・・・・」 「大丈夫だって」 「それよか今日は何して遊ぶ?」 二人の方を向いたタクヤは、廊下の窓から見える石環山に視線を釘付けにされた。 「あ・・・・・」 「タクヤ、どうした?」 「山の上、工事が始まるみたい」 日之出建設がキノコ岩の手前に看板を立てている。普段から遊び慣れた場所が一つなくなってしまうのだ。 「本当だ・・・・」 「マンションでも建つんだろ。それがどうしたんだよ?」 「なんか・・・・ちょっと引っかかって・・・・」 タクヤは窓枠によりかかり、じいっと外を見つめた。 「引っかかる?」 何時に無く真剣・・・・というより、無我の表情にダイもつられて石環山を見る。 「何が?」 「何って、それが思い出せないんじゃないか」 「あー、何かあったっけ?」 「なかったっけ?」 カズキとダイは二人して顔を見合わせた。 熱砂の砂漠の上にサンダージャイロの破片が散らばる。 「第二捕獲部隊、全滅しました!」 「うーむ、カスタムギアを持ってくれば・・・・!」 ゴルゴンを追いかけてここまで来たのにこの有様では、皇帝に合わせる顔がない。 大地が揺れた。 「ゴルゴン、地中へ潜ります!」 「何?」 砂地が地震のように裂け、先ほど移動したように黄金恐竜がしずしずと入っていく。後には地割れの形跡すら残らぬ砂漠があった。 「おのれ・・・・ソースカ平原におられる若君に連絡を!」 地上絵で有名なソースカ平原の上空には、ワルザック共和国所属・ザゾリガンが滞空をしていた。その名の通り赤いサソリのような移動空中要塞だ。ブリッジでは本皮張りのソファーでくつろいでいる年若い細面の美丈夫が、カーネルの通信を受け取っていた。 彼こそワルザック共和帝国皇太子、ワルター・ワルザック(二十)である。白皙の肌、右目にかかり気味な赤い髪、最上級のサファイアのような瞳が、見事な調和を持って配置されている。 「やはりパワーストーンだな。パワーストーンを手に入れなければ、我々の計画は失敗に終わる」 「仰せの通りでございます」 「フッ・・・・。安心しろ爺。全てはこの私が成し遂げてみせる」 「流石は若君!それでこそ陛下の後を継ぐお方でございます」 スクリーンの向こうのカーネルがもみ手をする。ワルターは黒檀造りのテーブルの上に置いてあるリモコンのスイッチを押した。 「我が国内で怪獣ゴルゴンと共に発見されたこのレジェンドラの石版には、こう記されていた。 『黄金の勇者の復活を望む者よ。地上で最も大きな男に尋ねよ。 男の手に刺さりし剣を抜かば、勇者を宿すパワーストーンのありかを示すであろう』」 「地上で最も大きな男とは?」 カーネルは答えの代わりにザゾリガンへの帰還命令を受けた。 命令を出したワルターは真下に見える地上絵に下りていった。地上に描かれた人間の姿は、左手を腰に手を当て、右手が何処かを指差すかのように真っ直ぐ伸ばされている。顔と右手の間には、湖ほどの大きさの池が生物もいない純水を湛えていた。右手の上には小さな祭壇のようなものが造られていた。重い石の扉を、付いてきた親衛隊員が二人がかりで開ける。 「あ、ありました!確かに古代の剣です!」 「やはりな。ふっふっふっふっ・・・・はっはっはっは・・・・! 地上で最も大きな男とは、このソースカの地上絵のことだったのだ!」 この場にいないカーネルに答えを教える。 「石版の言葉に従い、この剣を抜けば、パワーストーンが手に入り、勇者が復活するのだ」 ワルターは剣に手を伸ばした。 さんざんお説教された一日が終わった。石環山が見える通学路を家路に着いていたタクヤは、突如立ち止まった。 「あーーーーーっ!!」 「どうしたの、タクヤ君?」 「思い出した!」 「って何をだよ」 「あれだよ! あれ!」 晴れ晴れした表情でキノコ岩の見える石環山を真っ直ぐ指差す。 正に武者震いというわけか。ワルターは深呼吸をして剣に手をかけた。 「『黄金の力護りし勇者よ 今こそ甦り 我が前に現れ出でよ』!」 石版に記された復活の呪文を唱え、そのまま力を込めて剣を抜く。 抜けない。 「っく・・・う・・・抜けん・・・! うう、くくっ・・・!」 あまりの苦戦っぷりに、親衛隊員もワルターと一緒に柄を引っ張りにかかる。 「ふぬっく・・・くくっ・・・・」 スポン 「のわーーーーっ!」 しりもちを着いたワルターは、手に固い感触があることを確認する。柄だけ取れたとか、途中から折れたなんてオチではなく、剣はちゃんと台座からワルターの手に移っていた。 「ぬ、抜けた・・・・?」 だが、どうしたことか。勇者は何処に? と思ったのも一瞬のこと。すぐに地響きと共に天井が崩れ落ちる。 「わああああああっっっ?!」 ワルターと親衛隊員は大急ぎで祭壇を駆け下りた。息をつく間もなく、海も無いのに大津波が襲ってきた。 「わあーーーーーーっっっ?!?!」 タクヤたちは、学校の用具室から拝借してきた小さなシャベルでキノコ岩の根元を掘っていた。 「確か、この辺に埋めたはずなんだけど・・・・」 かつんと金属と金属が触れ合う音がする。 「あったー!」 タクヤは地面の中から錆びついた「麦ぼうろ」の缶を取り出した。 「わあっ・・・・!」 カズキとダイも懐かしさのあまり、思わず声を漏らす。蓋を開けると、埋めた当時の思い出が甦る。タクヤは飛行機のプラモデルを手にとった。 「懐かしー。へへっ、でも今見ると出来がめろめろだな」 「僕のハンドグリップは・・・・あ、まだ使えるよ!」 ダイはまだまだ現役オッケーのハンドグリップを嬉しそうに二人に見せる。 「カズキは?」 「いや、俺は、別に・・・・」 二人に背を向けて開いていた大学ノートを閉じる。 「あ、ちょっと見せてね〜」 タクヤはフェイントをかけると、カズキの手からノートを奪った。 「あっ!」 「やめろよ!」 ダイと二人で熱心に中身を検分する。何しろ埋めた当時は見せてくれなかったのだ。 「ふーん、何々・・・・肩叩きマシーンにお風呂ブザー?」 「自動犬に餌やり機、とかもあるよ」 「発明のアイディアノートか?」 「ま、そんなもんだ」 バツが悪くてそっぽを向きながらも、律儀にカズキは応えた。 「なーんかカッチョ悪ィーの」 「んな事言っても仕方ねえだろ。ガキんちょだったんだから」 「四年前か・・・・」 タクヤはノートをカズキに返すと、茜色に染まり始めた空を見上げた。この町で一番空に近い場所。夕日は過去を彩る最も相応しい色だと思う。 「つい、こないだみたいだけどな・・・・」 「そうだね・・・・」 「小学校二年の時だったよな」 「俺たち三人は、友情の記念だって言って、自分たちの宝物を持ち寄って・・・・」 「ここに埋めたんだ。タイムカプセルとして」 揺らめいてあやふやだった思い出が、言葉にするとはっきりと輪郭を見せてくる。 「宝物かぁ・・・・」 このキノコ岩で遊んだ思い出も宝物だ。それが消えようとしている。 ダイは掘り返した穴を埋めようとして現実に目を向けると、赤く淡い光が、掘った穴の更に奥から滲んでいた。 「? ねえねえ、見てよ!」 恐々と近寄ってみる。 「何だ、これ?」 「一体何の光だ?」 しばらく見ていると光が消えた。赤い光をじっと見ていたせいで、目がチカチカする。 「消えた・・・・」 「何だったんだ、今の光は?」 「さあな」 光が消えてつまらなさそうにカズキが返事をする。 「もっと下の方に何かあるのか?」 タクヤはわくわくした表情で屈んで穴の縁に手をかけた。 「や、やめてよ! タクヤ君ったら!」 ダイは何か出てきやしないかと慌ててタクヤを抑えたが、タクヤはそんなことおかまいなしだ。宝物を発見した子供そのものだった。 「ちょっと掘ってみようぜ! きっと何かがあるんだよ!」 洪水に流されて気を失っていたワルターは、まったく突然に目を覚ました。 「はっ?! ぱ、パワーストーン! パワーストーンは何処だ?! 何処だ?!」 「若君〜〜〜!」 青い空の向こうから、カーネル専用のカーゴシップ・カーネルサンダーが近づいてきた。 「カーネル・・・・」 「若君、大変です! 地上絵が・・・・!」 ザゾリガンに戻ったワルターは改めて正面スクリーンに映る地上絵を見た。腕と顔の間にあった池の水が全て抜けている。さっきの津波はこれだったのだ。祠が崩れた所為で、今まで欠けていた右手が全容を現した。指を真っ直ぐ何処かに向けて突き出している。 「水の抜けた池の底から、石版と同じ古代文字が・・・・! して、あの文字は何と?」 ソファの後ろで控えているカーネルが、スクリーンを見ながら答えた。 「『サッサ ト アッチ ヘー』で、ございます」 「サッサ ト アッチ ヘー・・・・? うーん、池に記された文字が『サッサ ト アッチ ヘー』・・・・池、と関け・・・・」 ワルターの中でリンクが繋がった。 「『さっさとあっちへ行け』か! ならば、あの指先の方向にパワーストーンが!」 マントをひるがえしてソファから立ち上がり、号令をかける。 「ザゾリガン、急速発進! さっさとあっちへ行け!」 「見つけた!」 辺りはすっかり暗くなり、星が見えている。胸の辺りまで掘った穴に埋まり、とうとうタクヤは赤い宝石のようなものを見つけた。 「わあ、きれい・・・・なんだろう、これ?」 「こりゃきっと、悪い金持ちかなんかが隠した超高いダイヤに違いないぜ。 ん!」 タクヤは宝石をカズキに渡すと、ダイに手を差し出した。心得たダイがタクヤを穴から引っ張り上げる。 「いや、こんな真っ赤なダイヤモンドがあるわけない。ルビーにしても少し変な感じだし」 タクヤに宝石を返しながらカズキが考える。 「それに、さっきの光がこれから出てたとすると・・・・」 突然三人の頭に声が響いた。 「え?」 そう、頭に響いたのだ。間違いなく、耳を通して音を聞いたのではない。 「何だって?」 「レジェンドラの勇者って聞こえたよ」 「オイラも聞こえた。それから・・・・」 「『復活の呪文を唱えよ』」 「そう・・・・!」 「それって一体・・・・」 顔を見合わせと、飛行機の爆音にも似た音が直ぐ側でした。星空を見上げると、赤いサソリが空を飛んでいる。 「何だありゃ?!」 ザゾリガンの中にいるワルターはスクリーンに映った子供たちの姿をアップにした。 「あれだ! くそう、何処のどいつか知らんが、パワーストーンを横取りする気だな! そうはさせるか!」 「ああ、若!」 ワルターはすぐにザゾリガンに搭載してあったギア(人型機動兵器の総称)キャノンガーに乗り込み、護衛のカスタムギアと共に石環山の頂上に向かった。 巨大なサソリから出撃した人型ロボットに、タクヤたちは目を丸くする。 「巨大ロボット?!」 グレーのザ○といった形のロボットが動いているのだ。まさかこんな実用化されているホンモノを目にするとは思わなかった。ちゃんと空も飛べるし、武器も構えている。だんだんアップになってくるとその大きさがわかって更に驚いた。 「こっちへ来るよ?!」 「逃げろ!」 回れ右をしたところへ、キャノンガーが道を塞いだ。 「ひえええ〜〜〜〜?!」 もう一度回り右をすると、グレーのザ○・・・もとい、三機のカスタムギアが逃げ場を封じた。 「何だよ〜〜〜〜〜?!」 タクヤが泣きそうな声をあげる。キャノンガー胸部のハッチが開き、マントをひるがえしてワルターが姿を現した。 「そこなお子達よ。大人しくパワーストーンを渡したまえ」 「ぱ、パワーストーンって、これのことか?」 タクヤは手に持っている赤い宝石を見た。 「多分、な・・・・」 カズキは相手が宇宙人かどうか検分したい気分だ。ワルターは象牙細工の銃を取り出すと、下で呆けているタクヤたちに銃口を向けた。 「私も手荒なマネはしたくはない。さあ、パワーストーンを渡したまえ」 ちゃんと日本語が話せる相手に安心したのか、タクヤは進み出て聞いてみた。 「へへ・・・・いくらで?」 ズキューン! 「どっひゃ〜〜〜〜〜?!」 ワルターは銃口から流れる硝煙をふっと吹き流す。 「手荒なマネはしたくないと言っているのだ」 「くそう・・・・」 「誰だ、おまえは!」 「ふふふふふ・・・・・名乗るほどの者だが、訳あって名乗らない」 一人悦に入って現実に戻ると、再びお子達に銃口を向けた。 「さあ、お子達よ。おとなしくそのパワーストーンを渡すのだ」 「くそう! タダってのが悔しいな!」 相手云々はどうでもよかったらしい。ダイは半泣きで自分より小柄なタクヤに縋る。 「タクヤ君、渡しちゃおうよ〜〜〜〜〜!!」 その泣き声を宥めるように、再び石から声が聞こえた。 「また聞こえた?!」 顔を見合わせて、三人とも聞こえていたことを確認する。 「『復活の呪文を唱えよ』」 「うん」 「そんなこと言ったって、呪文なんて知らないし・・・・」 「何をごちゃごちゃ言っているのだ! 渡すのか、渡さんのか?!」 どうやら石を探しに来たあちらさんには、声が聞こえていないようだ。 「そーだ! あいつなら呪文を知ってるかも」 「でも・・・・」 「教えてくれそうにもないぜ」 それどころか今にも銃を乱射しそうだ。ロボットで踏み潰されるかもしれない。 「オイラに任せろってーの! へへ〜」 タクヤは悪巧みを思いついた時の笑顔を浮かべ、今にも泣きそうな表情を作ってワルターの方に近づいた。 「おじさーん!」 「お、おじさん・・・・」 二十歳でおじさんはガンとくる。ショックを受けたワルターの前で、タクヤはお祈りをするように跪いて手を組んだ。 「どうして大人は、ボクたち子供をいじめるの? ボクたち、何にもしてないのに・・・・」 「へ?」 我に返ったワルターは、急な展開についていけない。 「ボクたちは偶然これを見つけたんだ。これがパワーストーンなんてのも、今初めて聞いたんだよ・・・・。それなのに、それなのに・・・・どーしてこんな怖い目にあわなきゃならないの?!」 「な、なんでも良いから、早くそれを渡すのだ」 流石にバツが悪いのか、ワルターはタクヤから視線を逸らして頬を掻いた。 「渡してもいいけど、これって一体何なの?」 「それは・・・・って言えるか!」 「ええ〜? ホントは知らないんでしょ」 「ばっ・・・・バカを言うな! 知ってるけど、言わないだけだ!」 「ホントかな〜? 大人はすぐウソつくからな〜?」 「知っていると言ってるだろ!」 「だったらさっさと言ってみそ〜」 「その石はパワーストーンだ!」 「それはさっき聞いたもーん」 「その中には、レジェンドラの勇者が封印されている!」 「それも知ってる、次どうぞ」 「勇者を復活させるには」 「呪文を唱えりゃいいんだ!」 「そうだ!」 とうとう辿り着いた。 「で、その呪文は?!」 「その呪文はこうだ! 『黄金の力護りし勇者よ 今こそ甦り 我が前に現れ出でよ』! だ!」 勢いに任せて口走った呪文に、タクヤがニヤリとする。 「あ、しまった!」 「呪文さえ聞けば、しめ子のウサギ! 見てろよ〜」 カズキとダイは期待の篭った眼差しでタクヤを見た。 「黄金の・・・・あと何だっけ?」 ずてっ。 「タクヤく〜ん〜・・・・」 「安心しろ、俺が憶えてる」 「さっすがカズキ君!」 「いかん、やつらに勇者を復活させてはならん!」 呪文の不発にワルターはこれ幸いと、キャノンガーに乗り込んだ。ハッチを閉めるのももどかしく、トリガーボタンを押す。 「危ない!!」 銃口が動いたのを感じたダイは、二人を両脇に抱えてキャノンガーから離れた。 「逃がすな!」 怖いのを我慢してカスタムギアの足元を潜りぬけるダイを、三機のギアの攻撃が襲う。 「うわ〜〜〜〜〜!!」 「おのれっ!」 爆風で吹き飛ばされもせずに逃げるダイの右腕の中で、タクヤはのんびりと親友を賞賛した。 「ダイの力持ちには感心するよ」 「それより早く復活の呪文を!」 「よし、タクヤ。俺に続け」 斜面を駆け下りるダイの左腕で、一緒に揺られるカズキが反対側を見て言った。 「『黄金の力護りし勇者よ』!」 「黄金の力守りし勇者よ!」 「『今こそ甦り』・・・・」 「今こそ甦り!」 「『我が前に現れ出でよ』!」 「我が前に現れ出でよっ!!」 パワーストーンが赤い産声を発した。 晴天の夜空からキノコ岩に雷が落ちる。キノコ岩を伝った雷は、大地に吸収されることなく放射状に町を走り、山を囲む二重の六角形を完成させた。一つに繋がった雷は、角度を変える点を隆起させる。巨大な石柱が街中にせり上がり、キノコ岩と共に尚も放電を続けた。タクヤたちが郷土史に詳しかったら、町にある塚が基点となっていることに気付いたろう。 「うっひょ〜〜〜〜?! 何だ、この石の柱は?!」 「環状列石だ。俺たちの町は、古代遺跡の上に建ってたんだよ」 この超常現象には流石のワルターも度肝を抜かれたのか、呆けたように見入っていた。パワーストーンは放電が終わるのを待ちきれないとばかりの勢いで赤く輝き、タクヤの手から宙空に離れる。 「ああ、パワーストーンが!」 光り輝くパワーストーンは、見る間に巨大なまでに膨張し、光が弾けた。 『黄金剣士ドラン 見参!』 タクヤ達の目の前に、一体のロボットが現れた。濃い灰色の鎧武者のような姿で胸に赤いパワーストーンを湛え、両足が金色だった。 「どひゃー・・・・・」 「宝石が、ロボットになっちゃった・・・・」 未だ放心状態のワルターも、ぽつりと呟く。 「あれが、レジェンドラの勇者なのか・・・・?」 ドランが地上に降り立つと、ダイは抱えていた二人を地面に落とした。頭の中がマヒしてしまっている。 『我が名は黄金剣士ドラン。レジェンドラの勇者だ』 「ロボットが、喋ってる・・・・」 カズキも冷めた反応など返せない。ドランはタクヤの前に跪いた。 『我が主よ』 「主ってオイラたちのこと?」 すぐに新しいおもちゃでも見つけたように、タクヤが目を輝かせる。 『いかにも。私を目覚めさせた君は、すなわち我が主』 「じゃあ、何でも言うこと聞いちゃうわけ?」 『主に忠義を尽くす。それが勇者の務め。なんなりと命ずるがよい』 「それじゃあ命令する!」 タクヤは立ち上がって真っ直ぐ四体のロボットを指差した。 「あいつらやっつけちゃって!」 『むっ?』 ドランは振り返って背後に命令対象を見つけた。 「ぎくっ!」 『心得た!』 ドランが腰の日本刀・竜牙剣を抜く。勇者が敵対することがわかったワルターは、カスタムギアを前面に押し出した。 「ええい、私に従わぬ勇者に用はない! やってしまえ!」 『でぇやあーーーーー!!』 ドランは銃撃をかいくぐり、一番近くにいた自分の二倍はあろうかというカスタムギアの腕を切り落とした。爆発する間も惜しく反転し、次のカスタムギアの胴を切り払う。反撃の銃弾を跳躍してかわし、再び大きくジャンプした。 『稲妻斬り!!』 落雷が起こった。竜牙剣が帯電し、大上段からカスタムギアを一刀両断にする。爆発したカスタムギアに、ワルターはドランに対しての先入観を少しだけ改めた。 「やるな。流石はレジェンドラの勇者。だが、このキャノンガーに勝てるかな?」 ワルターはキャノンガーの全身の砲門を開放した。連射型ミサイルが両肩に二門、両腕にそれぞれ三連装ランチャー、両足の膝にロケットランチャー、棘型ミサイルが胸の正面に十二門、腹部に三門の超重武装だ。それらが一斉に火蓋を切った。 『うおっ・・・・!』 ドランの声が爆発音にかき消される。爆煙と砂煙で姿も見えない。 「ああっ、ドラン・・・・!」 「いつまで耐えられるかな?」 砲撃に耐えながら、ドランは爆音にかき消されることの無い叫びをあげた。 『・・・・ゴルゴーン!!』 ドランのパワーストーンが輝いた。再び巨大な雷が地面に落ちた。大地が裂ける。地割れの隙間から金と赤の光が湧き、中から神獣の咆哮があがった。 「何?!」 うっかりキャノンガーのトリガーから指を離す。 「あれはっ・・・・!」 ザゾリガンのカーネルも声をあげる。 「今度は金ピカの怪獣だあ〜?!」 中から現れたのは、忘れられた神殿の地下に封印され、カーネルがさんざん追い掛け回していたゴルゴンだったのだ。 『ゴルゴン、黄金合体だ!』 ドランの声にゴルゴンの体が展開する。そう、ゴルゴンはロボットだった。前かがみの恐竜が背筋の伸びた人型に変わる。足首が百八十度回転し、尻尾から腰にかけてが二つに分かれて細い腕をカバーし、肩ができる。顎から胸の装甲が下にスライドして畳まれる。 『とおっ!』 空いた空洞に向かってドランがジャンプした。宙返りした体が宝石を填めた台座のように変形し、ゴルゴンに組み込まれる。 『黄金合体 ゴルドラン!!』 金色に輝く巨体が大地に立つ。 「これが、ゴルドラン・・・・」 キャノンガーと同じだけの大きさになったゴルドランに、ワルターは微かな畏敬の念すら覚えた。 「かっちょいい〜〜〜〜!!」 囃し立てるお子達の声に、我に返ったワルターはトリガーボタンを押す。 「キャノンガーをなめるなよ!」 再びキャノンガーが全身から攻撃を開始した。 「トドメだ!」 全ての弾を撃った後も、更に背中に背負った巨大な大砲を発射する。 「うわっ?!」 爆風に吹き飛ばされそうになりながら、なんとかタクヤたちはそれに耐えた。 「ふっふふふ・・・・本当の主を崇めぬ報いだ。 ん・・・・?」 煙の間からは、煤けてすらいない金色が見えた。煙が、晴れる。 『おぬしの攻撃はそれまでか』 そこには、全く無傷のゴルドランが立っていた。 『ならば今度はこちらから行くぞ! スーパー竜牙剣!』 ゴルドランは腰の刀を引き抜いた。足の裏の噴射口から大量の空気が噴出し、ゴルドランの体を浮き上がらせる。ブースターを点火させ、一気にキャノンガーに向けて加速した。 『一刀両断斬りーーーーーーっ!!』 よけられない! キャノンガーはスーパー竜牙剣によって袈裟斬りにされる。直後に起こった爆発を事前に検知したエマージェンシーシステムが、脱出ポッドを吐き出した。 「くっそうゴルドランめ! 憶えておれ!!」 ホバリングを終えて静かに着地したゴルドランは、スーパー竜牙剣を鞘に収めた。タクヤたちはゴルドランに駆け寄る。 「ナイスバトルだぜ、ゴルドラン!」 『礼には及ばん。主の為に力を尽くすのは当然のこと』 「へへっ、オイラたちが主か。なんかかっちょいいじゃん!」 タクヤは鼻の下を擦ってゴルドランを見上げた。カズキとダイが水を注す。 「なんて浮かれてていいのか?」 「ほえ?」 「そうだよ。もしかしたら僕たち、大変なことに巻き込まれちゃったんじゃない?」 「そういえば・・・・」 町の方に目を向ければ、どのビルよりも高い石柱が街中に聳え立っている。 「確かにちょーっとヤバイってカンジ。 オイラたちこれからどうなるんだ?」 警察が来るのかとか、学校でまた怒られるのかもしれないなど、現実的な問題が山積みされる。 『主は、私の仲間を探すのだ』 それとは全く関係ない答えをゴルドランが出した。 「仲間って?」 考えたくないタクヤは不思議そうながらもゴルドランを再び見上げる。 『私には七人の仲間がいる。七つのパワーストーンとなって、この世界のどこかに眠っているのだ。君たちはそれを探し出さねばならない』 「なんだって?」 「それは良いことを聞いた」 主従の会話を破ったのは、逃げ去ったはずのワルターだった。そう、ザゾリガンはすぐ近くにずっといたのだから。 「ならばその七つのパワーストーンを手に入れるまで」 ソファに座ったワルターがパチンと指を鳴らす。ザゾリガンの主砲が、タクヤたちとゴルドランに向かって放たれた。 「ああっ?!」 『主!』 「ふっふっふっふ・・・・はっはっはっは・・・・はーっはっはっはっは・・・・!!」 高笑いするワルターの持つグラスに赤いワインが注がれる。 「私に忠誠を誓わぬ勇者に用はない。改めて七つのパワーストーンを探すとしよう」 グオンッ!! 荒々しいエンジン音がザゾリガンにまで響いた。もうもうと立ち込める土煙の中から、金色のスーパーカーが飛び出した。 「何だと?!」 カーネル共々身を乗り出して、スクリーンに見入る。 「じ、自動車になっちゃった?!」 車の中ではタクヤたちも驚いていた。あの時ゴルドランがタクヤたちを守ろうと伏せ、合体を解いたのだ。そのまま車に変形し、抱き込むようにタクヤたちを乗せた。ゴルゴンは再び地中へと潜っていく。ドランは一気に街中に飛び出した。 「あれは・・・・」 「黄金の車ですな」 「そんなこと見ればわかる! おのれ、逃がすものか!」 ザゾリガンのビーム砲が、狭い街中をちょこまかと逃げ回る金色の車を追い掛け回す。 「うわ、やられちゃう!」 『この程度の攻撃で私はやられはしない』 車からするのは間違いなくドランの声だ。 「くっそう、チョコマカ逃げおって! こうなったら、この薄汚い町もろとも吹き飛ばしてやる!」 立ち上がったワルターはマントをひるがえした。 「ハイパー粒子爆弾、発射ーーーーっ!!」 「お待ちを」 「爺、せっかくキメているのに何故止める?!」 ワルターは水を注したカーネルに矛先を向けた。 「若君、ここで短気を出されては、我らの・・・・いや、我が国の野望は果たせませんぞ」 「くっ・・・・ではどうしろと?」 「ここはやつらを泳がせてみるのも一興かと」 タクヤたちが急に静かになった外に後ろを見上げると、ザゾリガンは回頭して去っていくところだった。 「奴ら、諦めたみたいだな」 「良かった・・・・」 「これで何とか家に帰れそうじゃん」 『いや、主は私と一緒に、第二のパワーストーンを探すのだ』 「ええ〜〜〜〜?!」 「マジぃ?!」 いきなり無茶な事を言い出すドランに、タクヤたちは当然のことながら渋い顔をした。 左右のドアの一部が手前に倒れ、中から双眼鏡と懐中電灯、そしてタクヤの前の床がせり上がり、赤い宝石を鋭く伸びた金のウイングで装飾したバッチが現れた。 『それらは、私がパワーストーン探しのために準備した、ゴルドシーバー、ゴルドライト、ゴルドスコープだ』 「なーんかわかんないけど、ま、いただいとこう」 タクヤはゴルドシーバーを胸につけた。高値で売れそうな気がしたからに他ならない。 「あ、ああ・・・・」 ダイの手にしたゴルドスコープが光りだす。上部の平面が小さなモニターのようになっていて、そこに四角錐が表示されたのだ。 『第二のパワーストーンは、この形の示すところにあるという。心当たりはないか?』 「これって・・・・」 「うん、ピラミッドだな」 「ってことは、アジプトか」 ドランは今度はゴルドスコープに世界地図を出した。 『アジプトとは何処にあるのだ?』 「アジプトっつーと、この辺かな?」 『心得た!』 加速したドランはガードレールを飛び越え、海に向かって飛び込んだ。 「「「うわ〜〜〜〜〜〜っ?!」」」 黒くうねる海水が、泡で一瞬真っ白に見えた。 「コイツ、海ン中走ってやがる・・・・」 「わあ。見て、お魚さん」 「ンな事言ってる場合か!」 呑気に魚の群れを見つけて喜ぶダイにタクヤがツっこんだ。 いくらなんでもこのまま本当にアジプトに行くなんて冗談ではない。 「俺はこれ以上ゴタゴタに巻き込まれるのは、もうゴメンだぜ」 「そーだよそーだよ、ソースだよ!」 さっきの戦闘を思い出し、ダイも表情を変えた。 「僕だって、もうやだよ」 『私の話を聞いてくれ』 明るかった車内が暗くなり、フロントガラスに八人のシルエットが映し出される。一人だけはっきりわかるのはドランだ。 『レジェンドラを守るために創られた私たち八人の勇者は、自分を目覚めさせた者にのみ忠誠を誓う。すなわち、悪の心を持つ者によって復活した勇者は、悪の勇者となってしまうのだ。私はレジェンドラを守るために、残りのパワーストーンを全て手に入れなくてはならないのだ』 「しっつもーん! さっきから言ってる、その・・・・レジェンドラって、何?」 核心をすっとばし、いきなりせつせつと訴えるドランに、タクヤは至極当然な質問をした。 『レジェンドラ。それは、黄金郷と呼ばれた超文明の名だ』 「黄金郷?」 「超文明?」 「レジェンドラ?」 『レジェンドラが何処にあるかは、私にもわからない。だが、八人の勇者が揃った時、レジェンドラの場所は明らかになるだろう。 レジェンドラの秘められた力があれば、どんな願いでも叶うという。私は、レジェンドラを心悪しき者から守りたい! 頼む、私に力を貸してくれ!』 「レジェンドラ・・・・」 タクヤが真っ先に思い浮かんだのは、建物も道路も交通手段も家具やら鉛筆、ノートに至るまで金尽くしの場所だった。きっと大仏や東京タワーも金だろうな。お金でできないことはないのだ。 「レジェンドラ・・・・」 カズキは二十二世紀とか二十三世紀辺りのイメージを思い浮かべた。ポケットからどんな便利なものだって出てくる場所なら、いかなる願いでも叶うだろう。 「レジェンドラ・・・・」 ダイはその響きに、ギリシャ風の白い神殿と、花園で戯れるペガサスや妖精を思い浮かべた。何でも願いが叶うってことは、そこって神様のいる場所だよね? 「つまり、残りの七つのパワーストーンを集めて」 「僕らで勇者を復活させれば」 「レジェンドラの場所がわかるんだな?」 『そうだ』 俄然やる気になったタクヤたちは、勢い込んで宣言した。 「ようっし、オイラ、力を貸すぜ!」 「俺もだ!」 「僕も協力するよ!」 『わかってくれたか・・・・ありがとう。皆の気持ちに感謝する!』 |
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