The Brave of Gold GOLDRAN




 ザゾリガンのスクリーンは、人工衛星が捉えたドランの行方を映し出していた。
「ふふふふふふ・・・・お子達よ、早く私を次なるパワーストーンの元に案内してくれたまえ」
 グラスを掲げるワルターの前には、例の石版が鎮座している。
「黄金郷レジェンドラ。そこには、人類が未だかつて手にしたことのない超パワーが秘められているという。このレジェンドラの石版にはそう記されていた。いずれ全てのパワーストーンから勇者を復活させて、その超パワーをこの手に掴んでやる!」
「ワルター様、予測到達地点が判明しました!」
 世界地図にドランの現在地と、その進行方向の延長線が引かれる。
「うむ、アジプトか。
 爺、至急本国へカスタムギアの補給要請を!」
「かしこまりました」
 

「ひゃあ、ここがアジプトか!」
 生まれて初めて海外に、車外に出たタクヤは一人、歓声をあげた。
「すっげー人の数だなぁ!」
 テレビや写真でしか見たことのない街並みや服装をした人々がいる。タクヤはドランに寄りかかって、おのぼりさんよろしくキョロキョロと辺りを見回した。
――パスポート無いけど大丈夫だよな?
カズキとダイは留守番にタクヤを置いて、パワーストーンらしきものがないか、市場に聞き込みにいっている。本当はタクヤも行きたかったのだが、ドランが後をついてきたら困ると思ったので止めたのだ。ジャンケンで。
『ううっ・・・・』
 いきなりドランが傾いた。
「うわっ!」
 寄りかかる場所を無くしたタクヤも転ぶ。
「痛ってー。どうしたんだよ?」
『す、すまない。目覚めてすぐの長旅で、疲れが出たようだ』
「へー、おまえって人間みたいにくたびれちゃったりするんだ」
 ま、いきなり地球の裏側だもんな。と、タクヤはドランを慰めるようにボンネットの辺りを叩いた。

「西のピラミッド?」
 一方カズキとダイは、言語の違いに気付かず、日本語でピラミッドの場所を尋ね歩いていた。有名な王の墓の方ではない。もっと小規模な、地元の人間しか知らないようなピラミッドの場所が知りたかったのだ。大々的な場所にあれば、今ごろ博物館にでも出土品として飾られているだろうから。
「大いなる神を封じ込めた石がある、との言い伝えがあるのじゃ」
 何軒目かの土産物屋の主人は洋画の吹き替えのように流暢な日本語で返した。
「きっとそこにパワーストーンが!」
「うん!」
「ありがとうございました!」
 二人はぺこりと頭を下げ、急いでタクヤとドランの待つ場所へ走った。
「ああ、これ待つのじゃ! 言い伝えには続きがあるのじゃよ! 恐怖の守護神スミインクスの伝説が!」
 と去り行く二人を手だけが追ったが、すぐに頭を掻いた。
「ま、いっか。ワシャ知ーらないっと」

 ドランは真っ直ぐ西のピラミッドに向かった。砂漠の中にポツンと建っているピラミッドは、想像していたものよりもずっと大きい。
「ここに第二のパワーストーンが」
 ガルウイング式のドアからドランの外に出てピラミッドを見上げる。
『ここからは、主だけで行ってくれ』
「ええ? 何で?」
『私の大きさでは、あの入り口からは入れない』
 中腹辺りに開いている入り口は、大人一人分ほどの大きさの穴だ。
「そうだね」
「んじゃ、ちょっくら行ってこようぜ」
 タクヤが二人を促し、石段の上に更に造られた階段を上っていった。
『頼んだぞ、主・・・・!』
 人の手の入っていないピラミッド内部は真っ暗だった。早速カズキが貰ったばかりのゴルドライトを点ける。スイッチ部分がドランのパワーストーン同様赤い宝石でできているシロモノだ。
「何かヤーな雰囲気。こういう処ってさー」
 緩やかな下りの傾斜が続いている。踏んだ床が少し沈んだようなのは気のせいか。
「お約束でさ、石がゴロゴロ転がってきたりするんだよなあ」
ゴゴゴゴゴ・・・・・
「うん?」
 突如後ろから聞こえた地響きに振り返ると、
「あ、あ、あ・・・・・!」
 本当に丸い大岩が転がってきた。
「ホントにゴロゴロ来たよ〜〜〜〜〜!!」
「はあっ、はあっ・・んでもって、槍とかも飛び出してくるんだよなあっ!」
 走りながらのタクヤの軽口に反応したのか、壁の両脇から槍が飛びだしてきた。
「わあっ?!」
 串刺しになるのを辛うじて回避すると、岩は互いの壁に突き刺さった槍にぶつかり、停止した。
「はあっ・・・・・」
 あまりの全力疾走に、岩の危険が無くなったとわかると、立ち止まって息を整える。
「でもってさ、毒蜘蛛とか毒蛇なんかもいるんだよねえ」
「言うなよ」
 しばらく休んで、更に先に進もうとしたタクヤとカズキの背中を見て、
「あーーーーーっ?!」
 毒蜘蛛、毒蛇を発見したダイは絶叫をあげた。
 下に下に進んでいくと、今度は砂漠の地下にあるとは思えないほどの地下水脈にぶつかった。大きめの飛び石を伝い、奥を目指していく。
「でも、何と言っても一番イヤなのは・・・・」
「「「落とし穴だよなあ・・・・」」」
ピシピシッ!
 飛び石が割れ、三人は落ちた。
「うわ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
 積み重なって落ちた場所で痛みを堪えてようやく立ち上がると、水脈の更に下には巨大な石像が安置されている空洞だった。
「痛っててて・・・・。な、なんだありゃ?」
「スフィンクスそっくりじゃねいか」
 スフィンクスそっくりな石像は、子供の声に反応したのか、瞳を青白く光らせた。
『私の名はスミインクス。パワーストーンを守護する石像なり』
「スミ・・・インクス・・・?」
『少年たちよ、パワーストーンが欲しくば、その命をかけて私の問題に答えよ。
 私の問題は・・・・』
「はーい、わかりましたー」
 スミインクスの言葉を最後まで聞かず、タクヤたちは手をあげる。
「朝は四本足、昼は二本足、夕方は三本足の生き物は? ってヤツでしょ?」
「答えは人間! スフィンクスの問題なら知ってるもんねー」
『ブーーッ!!』
「ええーーーっ?!」
 自信たっぷりだったというのに、いきなりハズレと言われ、仰け反ってしまう。
『私はアジプトのスミインクス。スフィンクスとは違うのだ。
 これを見よ』
 スミインクスの瞳が点滅すると、石のずれる音がしてタクヤたちの背後に、三つの講演台のようなものがせり上がる。
『私の問題は全百問。おまえ達は三人いるから三百問だ。一問も間違いは許さん』
「さ、三百問っ・・・・?!」
「一問も間違えずに・・・・?」
 どうやらさっきの台は解答者席らしい。
「どうする?」
 珍しく弱気なカズキに、タクヤは何より勝る好奇心と負けず嫌いで答えた。
「ここまできたん来たんだ、やろうぜ。
 でも、そのまえにー」
 タクヤはスミインクスの前に進み出ると、急に瞳を潤ませた。
「ねえ、ボクたちは子供だよ?」
『見ればわかる』
「子供は失敗を重ねて、やがて大人になるんだよ?それを、一問も間違え無しなんて、あんまりだようっ・・・・!」
『あ、あんまりか?』
「あんまりです」
 打ち合わせもしていないのに、カズキとダイも合いの手を入れる。タクヤは後ろを向いてこっそり舌を出した。
『ならば特別の特別に、一問だけ許してやろう』
「あ、んじゃあ、ボクら三人だから三問間違えてもいいんだね?」
『いいっ?!』
 これにはスミインクスも仰天する。
「問題が三倍だからそうでしょ?」
「三倍、三倍、三倍!」
 正にしてやったりと、カズキとダイが踊っている。
『値切る奴らだな』
 解答者席にタクヤたちが行くと、台の上には早押しボタンと、それに連動した「?」マークの立つピラミッド帽子が置いてあった。
「ようっし、んじゃ早速、おっぱじめよぜー!!」
『よかろう。では、これより問題を出す。
 第一問!』



 じりじりと太陽に炙られていたドランは、雲ひとつない空を遮るザゾリガンの機影を発見した。
『ん?』
 同様に、ワルターもまたドランを見つけていた。
「とうとう見つけたぞ! カスタムギア軍団、出撃!」
 ザゾリガンの上部にコンテナから、群雲のようにカスタムギアが射出される。
『来るか! チェーンジ!』
 すぐにドランはゴルゴンを呼んだ。このままではエネルギーが足りなさ過ぎる。
『黄金合体 ゴルドラン!』
 ゴルドランはスーパー竜牙剣を抜いて構えた。
『ここから先へは、一歩も通さん!』
 一対数百の戦いが始まった。

ぱぱぱらぱぱらぱぱー
 気の抜けるファンファーレが地下に鳴り響く。問題を聞き取るための緊張感は計り知れなく、肌寒い地下でタクヤ達は汗をかき、荒い息をしていた。早押しボタンを抑える掌も汗で濡れている。
『とんちコーナー! 第五十問目からは、とんちで答えるがよい』
「よっしゃ、とんちならオイラだな!」
 タクヤは任せろと、ガッツポーズを取ってみせる。
『横に歩くはずの蟹が真っ直ぐ歩いた。何故?』
ポーン!
「酔っ払いのカニだった!」
ピンポンピンポン
『うーん、正解。
 働き盛りのナマケモノと、怠け癖のついた働き者。ボーナスが多いのはどっち?』
「はあっ? うーんと・・・・」
 ナマケモノ(動物)とサラリーマンを思い浮かべる。
「あ、そうか! 答えは怠け癖のついた働き者! ナマケモノは動物だから、ボーナスなんてないもんね〜」
ピンポン
「調子いいじゃん!」
「イエ〜イ!」
『では次。今何問目?』
「ええ?!」
 タクヤどころかカズキもダイも目を見張る。
『この問題は何問目だ?』
「えっと・・・・わっかんねーよ!そんなの!」
『ブーッ! 答えは五十三問目だ』
 スミインクスの瞳が再び光ると、タクヤたちの背後の床が瓦解した。
「うわあ、あ・・・・!」
『パワーストーンが欲しくば、その命をかけて問題に答えよと言ったはずだ』
 タクヤたちはスミインクスを睨みつけた。
『さあ、次の問題だ』

『うおおおおおおおッ!』
 サブマシンガンを構えるカスタムギアを次々に蹴散らすゴルドランに、次第に焦りが生まれてきた。斬っても斬っても上空からは、尚もカスタムギアが吐き出されてくるのだ。
『主! 早くパワーストーンを! これではきりがない!』
 跳躍し、銃弾を交わす、着地と同時に斬る。もう何体倒したのか、無機質の残骸が砂を覆っている。
「勇者と言えど、力には限界があるはず」
 ワルターはグラスを片手にゴルドランとカスタムギアの戦闘を観戦している。
「パワーストーン捜索隊、出動致しました」
「抜かりはないな。流石は爺だ」
 カーネルは静かにVサインを出した。
 新たに降下したカスタムギアの背後に、機材を装備した親衛隊員が張り付いていた。着地と同時にギアから離れ、ピラミッドに向かう。
「こちら捜索隊、これよりピラミッド内部に突入します!」
「よし、必ずやパワーストーンを手に入れてくるのだぞ!」

ぱぱぱらぱぱらぱぱー
『スポーツコーナー!』
「体育のことなら、僕に任せて!」
 ダイは二人に向かってウインクした。
『サッカーと野球の選手を足すと何人になる?』
ポーン
「合わせて二十人!」
ピンポーン
『鉄棒を使った技を三つあげよ』
「前回り、逆上がり、えっと・・・懸垂!」
ピンポーン
『では、次は何問目?』
「ええ?!」
「ま、またかよ!」
「えへっ・・・・・」
「ダイ、数えてたのか?」
 タクヤの期待を裏切って、ダイは首を横に振った。
「ぜーんぜん」
「あら・・・・」
『ブーーー!!』
 今度はダイの直ぐ側まで床が消えた。
「ひえええ・・・・!」
『答えは百五十三問目だ』

 まだ終わらない。まだ増えてくる。流石のゴルドランも刀を杖代わりに立っているのがやっとだった。眩暈さえしてきた。
『い、いかん・・・・目覚めてすぐの長旅に、この敵の数・・・・。私の力も限界か・・・・』
 すぐにゴルドランは首を振った。
『いや、私は負けない!』
 口に出して自分に言い聞かせただけでも気力が戻る。
『主がパワーストーンを見つけるまでは、絶対に!!』

「後、何問だ?」
 荒い息と共にタクヤが尋ねる。答えは別に期待していない。
「残りジャスト五十問!」
「もうちょっとだね」
ぱぱぱらぱぱらぱぱー
『ここからは超難しい難問コーナーだ。
 電子エネルギーが不連続的な値しかとれないことを解決した数式は?』
「「ええーーーーっ?!」」
 タクヤはダイが絶叫する。ハズレにされないよう、スミインクスに聞こえない声で文句を言う。
「何それ」
「ンなの小学生にわかるわきゃ・・・・」
ポーン
 カズキがボタンを押した。帽子の上に「?」マークが立つ。
「答えはシュレディンガーの波動方程式だ!」
ピンポーン
『アイソトープと置き換えることによって・・・・』
「反応速度論理的同位体効果!」
『デルタ翼が・・・・』
「ドイツの設計師A・Mリピッシュ!」
『サッカーボ・・・・』
「バックミンスターフラーレンC60!」
『三角関数・・・・』
「ハイパボリックアークタンジェント!」
 次々に超難問を答えるカズキに、タクヤとダイは瞳を潤ませ、頼もしい雄姿を焼き付けた。
「カズキすげえ・・・・!」
「クイズ王みたい・・・・」
『では、今何問目?』
「そうくると思ってたぜ!!」
 カズキは折り曲げた指を高々と上げた。
「数えてたのか?!」
「さっすがカズキ君!」
「まあな」
 暗算でやると間違えそうなので、指を折っていた辺りが少々情けない気がするが。
「おまえがいりゃ、百人力だぜ!」
 三人は駆け寄って、互いに拳を握り締めた。
「この調子でパワーストーンはいただきだぁ!」
「うん!」
「やるぜ!」
『で、答えは?』
 無理だとわかっているようなスミインクスの声。
「ああ、答えは・・・・・」
 拳を開いたカズキは愕然とした。さっきまでどの指を折っていたのか、感覚すら朧だった。
「ああ、指が・・・・は、はは・・・・・」
 そのままバンザイをするカズキにつられて、タクヤとダイも両手をあげた。
『ブーーー!!』
 カズキの直ぐ側まで床が抜けた。
『もう間違えは許されんぞ』

『ああ・・・・・』
 最後の一体を切り崩し、ゴルドランは膝をついた。
「たった一人でカスタムギア軍団を全滅とは・・・・。流石はレジェンドラの勇者。
だが!」
ゴルドランの前に、意匠の異なるロボットが下りてくる。
『何っ?!』
「今のおまえが、この砂漠専用ロボット・デザートロンに勝てるかな?」
 動くことすらままならないゴルドランは、デザートロンの腕が投げつけた鞭をよけることができなかった。全身が鞭で絡め取られる。
『し、しまった!』
「もう逃がしはしないぞ、ゴルドラン! くらえ!」
 電撃が鞭を伝って流れる。
『うおおおおおおおっっっ・・・!!』

『いよいよ最後の問題だ。覚悟はよいな?』
 スミインクスは、肩で息をするタクヤたちを見下ろして言った。
「おう!」
 疲れてはいるものの、覇気のある声がスミインクスを圧倒しようと張り上げられる。
『では、最後の問題。私が守っているパワーストーンに封じ込められた勇者の名前は?』
「ええ〜〜〜〜〜?!」
「そんなのわっかんねーよ!」
『あ、主よ・・・・』
 荒い吐息と微かな声が、タクヤたちの直ぐ側でした。
『私の声が聞こえるか・・・・・』
「こ、この声は・・・」
「ゴルドランだ!」
「何処から聞こえてるんだ?」
 タクヤの胸のゴルドシーバーの宝石が、僅かに赤い光を放つ。
「こ、これか?」
 ダイとカズキもポケットに仕舞ったゴルドスコープとゴルドライトを取り出した。やはり僅かながら光を発している。
「どうした、ゴルドラン?!」
 聞こえるのは苦痛に喘ぐ荒い息。
「きっと、あの時のやつらだよ!」
「くっそー、あっちもこっちも大ピンチか!」
『さあ、答えは?』
 急かすスミインクスを思わず睨みつけたタクヤだったが、すぐにゴルドシーバーに向かって囁いた。
「そうだ! ゴルドラン、オイラたちの探している勇者の名前を知ってるか?」
「知ってたら教えろ!」
 タクヤの意図に気付いて、カズキとダイもゴルドランに頼んだ。
「ゴルドラン!」
「早く!」
『そ、その名は・・・・アドベンジャー・・・・!』
 タクヤは勢いよく解答ボタンを叩いた。
「よっしゃー! やい、スミインクス! 最後の問題の答えは・・・・・
 アドベンジャーだ!!」
ピンポンピンポンピポーン!!
 正解音と共に、崩れ落ちた床が元に戻っていく。
『正解だ。おまえ達の知恵と勇気に、このパワーストーンを託そう』
 スミインクスの口から発した青い光が、タクヤの手を直撃する。光が収まると、そこにはドランと同じ形で青い色をしたパワーストーンが収まっていた。
「やったぜ! 第二のパワーストーンだ!」
「早く復活の呪文を!」
「わかってるって!
 黄金の力護りし勇者よ、今こそ甦り、我が前に現れ出でよ!!」
 青く輝いたパワーストーンは、一気にピラミッドの頂上を突き破り、形を成した。
「何っ?!」
 壊れたピラミッドの頂上と、現れた威容にデザートロンの動きが止まる。
『チェインジ!』
 砂漠に黒鉄の巨人が降り立つ。
『鋼鉄武装 アドベンジャー!』
『おお、アドベンジャー!』
 ゴルドランが苦痛の中からも喜びの声を上げる。
「な、なんと! あのお子どもがまた勇者を?!
 おい、パワーストーン捜索隊! 何をしているんだ! おい!返答せい! おーい!」
 返事がない。数々のトラップを潜り抜けられず、全滅していた(死んでません)。
 光と共にピラミッドの頂上まで運ばれたタクヤたちは、甦った勇者を見下ろした。
「わあっ・・・・」
「あれが二番目の勇者か」
「チョーかっちょいーーー!」
 アドベンジャーは、主を振り返った。
『主よ、私に命令を!』
「よーし、アドベンジャー! あのロボットをやっつけろ!!」
「ぎくっ」
 昨日も同じことを言われたばかりなのに。
『了解!』
 アドベンジャーは砂地を颯爽を駆け、ゴルドランを拘束している鞭を蹴り切った。
「わあっ?!」
『すまぬ、アドベンジャー』
 体に巻きついていた鞭を投げ捨て、礼を言う。
『なんの、これしき』
 すぐに立ち直ったデザートロンは、足場を固定して胸についたファンを回し、強烈な砂竜巻を放った。
「最高パワーの人工砂嵐を受けてみろーー!」
『むん!』
 アドベンジャーはゴルドランを庇うように砂嵐の前に立ちはだかると、なんと片手でそれを受け止めた。
「なっ・・・・そんな・・・人工砂嵐のパワーに勝るなんて・・・・」
 ワルターが驚いている間にも、アドベンジャーは一歩また一歩とデザートロンに近づいていく。
「そんな、そんなバカな〜〜〜〜〜!!」
『どおおーーーー!!』
 ファンに直接拳を叩き込まれ、デザートロンは吹き飛んだ。
「のわーーーーーっ?!」
『後は任せた、ゴルドラン!』
『心得た!』 
 ゴルドランはスーパー竜牙剣を構えた。残ったエネルギーでデザートロンに向かって加速をかける。
『一刀両断斬りーーーーー!!』
 爆発四散したデザートロンから、脱出ポッドが飛び出す。
「おのれ〜〜〜〜、一度ならず二度までも! 憶えておれよ〜〜〜〜!!」
 そんなワルターを放って、タクヤたちはアドベンジャーに夢中だった。
「いいぞ! アドベンジャー!」
「イカしてるぜ!」
 ゴルドランとアドベジャーは、がっちりと拳を合わせて頷いた。
 既に陽は傾いている。アドベンジャーはその中で、SLに変形してみせた。またもや新しいおもちゃを貰ったように、タクヤたちは顔を輝かせる。
『見てのとおり、私は仲間を輸送する能力を持っている』
「これで移動すれば、今日みたいにドランがヘトヘトにならずに済みそうだね」
「これからもヨロシクな、アドベンジャー!」
『了解!』 
 返事と共に、汽笛が鳴った。
 

 ワルターは、彼を跪かせることのできる唯一の人物の前に頭を垂れていた。隣には更に小さくなっているカーネルがいる。
「皇帝陛下、残念ながら二人の勇者を手に入れることはできませんでした。しかし、レジェンドラの石版によって、新たなる事実が明らかになりました」
「『勇者は死することなし。肉体の滅びし勇者は再びパワーストーンに戻り、復活の呪文によって甦る』」
 カーネルが石版の言葉を復唱する。
「すなわち、彼らを倒せばパワーストーンに戻ることがわかったのです」
 ワルターは立ち上がり、礼を持って皇帝に誓いを立てた。
 このワルター・ワルザック、必ずや八つのパワーストーンを集め、レジェンドラに秘められた超パワーを手に入れて見せます。皇帝陛下」
 そこでふっと言葉を切った。これは、皇帝からの命令ではなかったからだ。
「いや、父上」
 トレジャー・ワルザック皇帝の膝の上で、愛猫がにゃおんと鳴いた。
 

砂漠の夕日は絶景だ。アドベンジャーの窓から地平線の彼方に消えてしまうのを名残惜しく振り返って見ていた。
「楽しかったな」
「は?」
 いきなりのカズキの言葉に、タクヤとダイが「?」となる。夕日を受けてモノトーンに見える顔が、随分と大人びて見えた。
「ハラハラしたけどさ、ガキの頃に戻ったみたいで」
 すぐにタクヤもダイも相好を崩した。
「僕も、ドキドキしたけど面白かった」
「うん、オイラもスカッとしたぜ!」
 やることは決まった。レジェンドラの宝も気になるが、こんな体験ができるならパワーストーン探しも悪くない。
「帰ったら忙しくなるぜ。なんてったって、学校行きながらパワーストーン探しだからな!」
「覚悟はとっくにできてるぜ!」
「僕も頑張るよ!」
「――――かくして、冒険の始まりってか・・・・?」
 〆はタクヤのナレーションで終わった。



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